エルダー2023年5月号
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事業の成長と人材の評価・選別のうこともあるため、最低賃金の法規制を設けることが重要な社会政策となります。3企業がメ労カ働ニ者ズをム雇うのは、一般家庭で家政婦やベビーシッターを雇ったりする場合の「消費的労働」とは根本的な違いがあります。企業の場合は、労働の成果が企業内で消費されずに、後工程に次々とリレーされ、最終的には会社の商品・サービスとなって顧客に効用と満足を提供し、その代価として会社の売上げ、そして人件費や利益の源泉となる「付加価値」を実現します。付加価値とは、簡単にいうと、会社の売上げから、原材料の仕入れや外注にかかった費用(直接原価)を引いた残り、「売上総利益」あるいは「粗利」のことです。このなかから、会社が支払う賃金・賞与・退職金費用・社会保険料などの人件費、役員報酬、設備に対する償却費などの内部経費や、借入金利息・賃借料などの外部経費がまかなわれ、最後に税前利益が残ります。税金や株主配当を引いた残りが、最終的な「純利益」として会社に蓄積されていきます。多くの会社は、これらの経費を成長の原資として人材や設備、資金に再投資し続け、さらなる事業の成長拡大を目ざします。会社のいろいろな仕事は、付加価値の拡大再生産という共通の事業目的を効率的に達成するために、高度な分業制によって組織的に編制された「人と仕事の構造体」であり、その付加価値を原資とする配分・再投資・成長のメカニズムこそが企業経営の核心です。ただし、経済が成熟化して競争が激化し、賃金が高くなればなるほど、人を増やせば収益が増えるという成長機会はかぎられます。複雑な分業制や情報ネットワークからなる高度経済社会において、企業が求める労働力は単なる「人手」ではなく、知的に訓練されさまざまな業務に有能さを発揮できる「高度人材」であり、採用する側もされる側も、互いに厳しい競争にさらされます。同様の競争・選別は必然的に企業内部でも行われ、評価制度の運用や個別の賃金決定に大きな影響を与えます。例えば新卒が同じ初任給で入社しても、早く仕事を覚え、成長する人材は評価も高く、早く昇給するでしょう。仕事が簡易で人の代替がきく職種よりも、仕事がむずかしく育成に時間やコストがかかる専門的な職種や、責任が重く代替の利かない仕事のほうが、社内の賃金待遇は高くなります。このように考えると、賃金は、単に人を雇い生活を支える必要コストではなく、さまざまな経営課題に積極的にチャレンジし、成果を上げる人材を確保・育成するための「人的資本投資」として再定義されねばなりません。会社の賃金制度も、そのような人の目的意識的な働きをうながし、活躍にふさわしい賃金待遇を実現する戦略的な仕組みとしてリニューアルされる必要があるわけです。4賃金制賃度金に制つ度いはて人は、基①準人か材ら、仕②事仕基事、準③へ成果のうち、どの要素を重視するかによって、およ2023.544図表2 4つの賃金制度に注目しに注目しに注目しに注目しで賃金を決める属人給で賃金を決める仕事給〈1〉で賃金を決める仕事給〈2〉で賃金を決める出来高給©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載人材仕事役割成果能力・年功職務評価役割・貢献度出来高職能給職務給役割給歩合給

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