エルダー2023年5月号
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肉などの運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を「ロコモティブシンドローム」(略して、「ロコモ」)といいます。要支援、要介護になる最大の原因は転倒による骨折や、関節の病気など運動器の障害です。ロコモ度が進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。そのロコモ度を簡単に調べるチェック法として七つのロコチェックがあります(図表2)。19人:平均年齢77・3歳)に七つのロコチェックを行い、12カ月間追跡したところ、ロコチェックの数が多い人ほど、よく転倒していました。ロコチェックの数が一つ増えるごとに転倒へのオッズ比が1・32倍高くなり、ロコチェックの数が四つ以上となると転倒の高リスクとなりました(オッズ比9・26倍)※1。読者のみなさんは片脚立ちが何秒くらいできるでしょうか。開眼で片脚立ちが15秒以上できない人を「運動器不安定症」といい、転倒リスクが高い状態です。骨と筋肉を鍛えて転倒を予防するには、「ダイナミックフラミンゴ療法」が有効です※2。フラミンゴのように片脚で立ちます。ふらついて倒れないように椅子やテーブルで身体を支えて、左右1分ずつ1日3回(朝昼晩など)からスタートしてみましょう。転倒だけでなく、人生につまずかないためにはどんなことに配慮したらよいのでしょうか。エイジング(老化)をポジティブにとらえている人はネガティブにとらえている人に比べて、健康で長生きするといわれています※3。そのような人は運動習慣があり、睡眠の質が高い傾向があります。また、仲間が多く、楽観的で何らかの目的意識を持っていたようです。運動の変化ステージは無関心期から維持期の五つのステージに分かれます。ステージごとに作戦は異なりますが、運動習慣をつけるためには運動したくなる刺激をたくさんつくっておくことが大切です(図表3)。エイジングと運動病態の把握と情報交換・体力テスト・サポート・環境調整(過去の運動歴、現在の歩数、階段使用、犬の散歩など)エルダー行動目標設定・賞賛・障害対策刺激統制法・認知再構成法・自己監視法傷害予防スキル伝授・効果の確認・体操を紹介している・体操を紹介している テレビ番組を見る・運動したくなるポスター・運動したことを記録(カレンダー、アプリ)・玄関にウォーキングシューズ・運動グッズを出す刺激統制法の例51図表2 七つのロコチェック図表3 運動したくなる刺激をつくる※ 筆者作成出典:Shigematsu H, et al. Can the loco-check be used as a self-check tool for evaluating fall risk among older subjects? A prospective study. J Orthop Sci. 2021;26(5):891-895.※1  Shigematsu H, et al. Can the loco-check be used as a self-check tool for evaluating fall risk among older subjects? A prospective study. J Orthop Sci. 2021;26(5):891-895.※2  Sakamoto K, et al. Why not use your own body weight to prevent falls? A randomized, controlled trial of balance therapy to prevent falls and fractures for elderly people who can stand on one leg for ≤15 s. J Orthop Sci. 2013;18(1):110-20.※3  Nakamura JS, et al. Associations Between Satisfaction With Aging and Health and Well-being Outcomes Among Older US Adults. JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2147797.65歳以上の高齢者154人(男性35人、女性1  1. 片脚立ちで靴下がはけない 2. 家の中でつまずいたり滑ったりする 3. 階段を昇るのに手すりが必要である 4. 横断歩道を青信号で渡り切れない 5. 15分くらい続けて歩けない 6. 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である 7. 家のやや重い仕事が困難である無関心期準備期関心期維持期実行期刺激→行動→結果健康ライフ健康ライフ

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