エルダー2023年5月号
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報告書」において、「メンバーまた、政府が現在要請している採用活動の時期については、例えば2023年度卒業・修了予定者は採用選考活動開始を卒業・修了年度の6月1日以降としていますが、2026年春卒業・修了予定者より、専門性の高い学生を中心により柔軟な方向に見直すよう検討を進めるとしています。現状でもすでに幅広い人材の確保を目的に、新卒採用でも通年採用を行う企業や、新卒・既卒の別を設けない採用を行う企業も増えてきています。これらの変化は政府が主導する前に各社が独自で進めている点も多分にあります。専門性のある人材を中心に、人材の確保は各社の重要課題となっており、横並びの採用活動では立ち行かなくなりつつあることが背景にあります。それではなぜ、人材の確保が重要課題になっているのでしょうか。それは、会社が労働力を求める求人と働くことを申し入れる応募の需給バランスが崩れていることに起因しています。求人数が応募者数を上回る状況を売り手市場(応募者が有利)、求人数が応募者数を下回る状況を買い手市場(企業が有利)と呼びますが、現在は売り手市場といえる状況にあるからです。例えば、一人の求職者に対してどれだけの求人があるのかを表す有効求人倍率は2022年12月時点では1・35倍、2022年平均で1・和4年12月分及び令和4年分)について」厚生労働省)。ただし、こちらは新規学卒者を除きパートタイムを含むものであるため、リクルートワークス研究所の「第39回人倍率調査(2023年卒)」で大学・大学院卒で求人倍率をみると、2023年3月卒業予定1・58倍という状況にあります。業界別にみると金融業は0・22倍という狭き門に対して、流通業7・77倍、建設業7・70倍というように求人倍率に格差が明確に存在する状況です。このような学生の取り合いともいえる状況下、優秀人材の確保を目的に、2022年度大学卒初任給平均21万2129円(「2022年度決定初任給の最終結果」一般財団法人労務行政研究所)に対して、25万円〜30万円をターゲットに初任給の大幅引き上げを2023年3月時点で公表している企業が複数出てきています。今後は企業が〝選ばれる側〟へ採用政策を切り替える流れが進んでいきそうです。* * * 次回は、「安全配慮義務」について解説します。ワークス大卒求* した採用です。職務内容はジョブディスクリプション(職務記述書)などで定義され、この定義に限定して働くことが想定されています。特定職務の必要性に応じて人を雇用するという意味からジョブ型雇用と呼ばれることもあります。日本の採用の特徴的な傾向として、「新卒一括採用」、「職務の限定なし」と従来からいわれていますが、現在この傾向は変化の過程にあります。経済産業省が2020(令和2)年に公表した「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 シップ型雇用は、事業環境が急速に変化し、個人の価値観・ニーズも多様化するなかでは、変化に対応した人材の育成・獲得や従業員の専門性の観点から課題が顕在化してきている」、との指摘があるように従来型の採用では限界があるという認識が広まっています。具体的な変化の一つとしては、就業経験のない新卒採用ではジョブ型の採用は向かないというのが従来の一般的な認識でしたが、現在では学生時代で専門スキルを習得可能なIT分野を中心に、新卒のジョブ型雇用も広がりをみせています。採用の傾向は変化の過程にある採用は〝売り手〟市場53エルダー28倍となっています(「一般職業紹介状況(令■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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