エルダー2023年5月号
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(聞き手・文/溝上憲文撮影/中岡泰博)定年後の処遇は成果部分の上乗せを大きくしペイフォーパフォーマンスの徹底をのポストオフなど、一プレイヤーとして活躍しなければいけないことを見すえてキャリアを考えていく必要があると思います。いくら能力が高い人であっても、ずっと管理職で居続けることは不可能です。役職に就くのは一時的な状態であり、決して〝上がりのポスト〟ではありません。基本的にはなんらかの職種でパフォーマンスを発揮することがベースにあることを意識することが必要です。管理職になっても営業なら営業の仕事、経理なら経理の仕事を忘れない。ポストオフになっても、その仕事で力を発揮することを意識していれば、就業期間が長期化した現代でもうまくやっていけるのではないかと思います。坂本 そこには二つの議論があります。会社としては「パフォーマンスが高くない人を含めて雇い続けなくてはいけないのか」という議論があります。一方、高齢社員のなかには「自分のパフォーマンスは下がっていないのに、なぜ年齢が高いだけで給与が下がるのか」という議論もあります。つまり、企業側は「いつまで給与を払い続けなければいけないのか」、労働者側は「どうして給与が下げられるのか」という両方の視点があります。高齢期になると、どうしても仕事の能力にバラツキが出てきますが、そこをどう評価していくのかが人事管理上の大きな課題になります。解決策として、定年後の処遇はペイフォーパフォーマンスの徹底が基本になると思います。「ペイフォーパフォーマンス」というと、「日本の労働者を全部成果給にすればよい」という議論になりがちですが、現役時代と高齢期で制度を変えてもよいのです。現役時代は子どもの教育費や住宅ローンの支払いもあり、成果給だからと給与が極端に変動するのは受け入れられないし、雇用と収入の安定が必要です。しかし高齢期であれば十分許容できると思います。現役時代は日本型の仕組みを残しながら、年齢とともに徐々に成果型に移行し、高齢期はベース給を低く設定して、その分パフォーマンスを上げている人はしっかり評価して成果部分の上乗せを大きくしていくという設計が基本になるのではないでしょうか。坂本 います。年齢を重ねるうちに、より短い時間で働きたいという人が増えてきます。プレッシャーも高くなく、ストレスも少なく、無理なく働ける仕事を好むようになっていく傾向があります。公正な処遇の結果としてそうした形の運用になっていくのではないかと思います。働き方も短時間勤務や隔日勤務など、ある程度本人が選択できるようにしたほうがよいでしょう。人事管理がむずかしいとは思いますが、できるかぎり個別性を考慮した働き方ができるように設計していただくことを期待しています。働き方のスタイルも変わってくると思―改正高年齢者雇用安定法により、企業には65歳までの雇用確保義務と70歳までの就業機会確保の努力義務が課されています。高齢社員が豊かな職業人生を送るために、企業が取り組むべき課題とは何でしょうか。仕組みが必要でしょうか。―働き方も「小さな仕事」のように柔軟な2023.54 株式会社リクルート リクルートワークス研究所 研究員/アナリスト坂本貴志さん

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