エルダー2023年5月号
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年齢を重ねることによる有病リスク医療機関のなかで就労の相談窓口を担当していると、いろいろな困りごとを抱えた相談者がいらっしゃいます。この日は数日前にがんと診断されたという62歳の田中さん(仮名)が来談されました。「主治医からいくつかの治療方針を示されたけれど、仕事を続けられるかどうか不安で、会社に伝えることも治療を選択することもできず、どうすればよいのだろうか」というご相談です。いま、こうした年齢を重ねた60〜70代の労働者からの相談が増えています。働くことは日常の一部に組み込まれていて、生計を立てるためにもまだまだこの先も働くつもりでいたけれど、思いがけず病気に見舞われ、「先の見通しが立た病気の治療を続けながら働ける会社へ一ない」と青い顔をして駆け込んでこられるのです。なかには、定年まで勤め上げた企業で再雇用されて嘱託社員として働いているという人も多くいます。田中さんもそのお一人で、「働けないと思われてしまうと、雇用契約が更新されなくなる」という差し迫った悩みが聞かれました。年齢を重ねると、長年使ってきた体に不調が出てきたり、病気にかかりやすくなったりします(図表1)。生物としてあたり前に起こり得るきわめて自然なことですが、現代社会に生きるうえでは、田中さんの例のように突然の困りごととして出現することとなります。経済拡大や人口増加が見込める時代であれば、正社員から年金生活へと円滑に移行するなかで、その困りごとが解消されることもあるでしょうが、少子高齢化に直面する現代社会においてはなかなか対処がむずかしいといわざるを得ません。私たちが現代社会において抱える課題が表面化しているといえるのです。7っりみ 服は部と文ふ般社団法人仕事と治療の両立支援ネットーブリッジ代表理事(単位:千人)特集病気の治療を続けながら働ける会社へ図表1 年齢階級別推計患者数 318.6318.6442.3442.321.621.635.835.81,109.81,109.8780.5780.5664.5664.594.594.5166.0166.057.157.11,700.91,700.9297.6297.620代30代エルダー50代60代40代外来入院70代厚生労働省「令和2年(2020)患者調査」より著者作成総 論

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