エルダー2023年6月号
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のようなパターン化された教育プログラムも実用に向きません。つまり、人材を一くくりに集団として効率的に扱えないのです。そして、多様なのは求職者だけではありません。企業の人材ニーズもきわめて多様です。特に中小企業はどこも口をそろえて「人がほしい」といいますが、要求の内容を一つひとつ聞くと、「うちは営業がほしい」、「管理ができる人材がほしい」、「技術のある人材がほしい」、「事業後継者がほしい」、さらには「近隣から通える人がほしい」など、さまざまなことをいいます。そして「うちではこれができなければダメだ」という具体的な要求もあります。このような個別のニーズに応えられるシニアを探し出すのは至難の業です。応えられるかどうかも、採用後、実際に働いてもらわなければわかりません。こうした実態があり、シニアの労働市場で求人と求職のマッチングを成功させるには、一般的なシステムでは対応できず、かといって個別対応をすると、民間ベースでは手間やコストがかかりすぎて採算が取れないのです。さらに、シニアの求人案件の数そのものがまだまだ少ない状況です。弊社のエグゼクティブサーチでも、求人案件のうち、30〜45歳の人材を求めるものが95%以上を占めています。最初からシニアを採用ターゲットにしている会社は、ほとんどありません。日本に企業は400万社あり、弊社のクライアントはそのうちの1000社に過ぎませんから、シニアを求める企業がゼロだとはいいません。しかし、星の数ほどもある会社のなかから、そういった会社を見つけ出して、最適なシニア人材とマッチングさせるのは、むずかしいというのが現状です。企業が、シニアの採用を敬遠しているという実態があるのでしょうか。郡山 そんなことはありません。同じ仕事をしてもらえる人材で、複数の候補から選べるなら、若い人よりもシニアを採用したいと考える企業は少なくないと思います。その場合、企業がシニアを採用するメリットとはどのようなことでしょうか。郡山 強度の高い肉体労働やITなど先端技術の開発といった一部の仕事を除けば、シニアにできない仕事はありません。むしろ世の中の仕事の8割くらいは、シニアの方がうまくできるのではないかとの印象を持っています。そのうえ、シニアはいままでの経験上、雇う立場から見て有利な特徴を備えていると考えます。まずは、「辞めない」こと。シニアは生活費のために働くことはあっても、より高いポストを求めて転職先を探すことは、まずしません。弊社の社員はほぼ全員が60歳以上ですが、勤続10年以上の人が何人もいます。そして「休まない」。働くシニアは健康管理もしっかりしています。私を含めて、周りのシニアが病気で仕事を休んだのは、3年に1、2回です。また、シニアの多くは、子どもの教育費がかからず、住宅ローンの返済もすんでいて、給与面であまり高望みをしないこともあります。れている」とは、どういうことでしょうか。郡山 外れた言動はしませんし、業務を遂行するうえでの応用が利きます。弊社の社員も、普段は人材エージェントの業務を最前線でになっていますが、以前の会社での経験を活かし、いざというときに経理や人事などの業務の助っ人を申し出てくれる人が何人もいます。活躍していた時代とは、仕事のやり方もテクノロジーも大きく変わり、過去の経験をそのまま活かせるわけではありません。経験が活きるのは、おもに人間関係などの領域ですね。くさんありますから、シニアを多く活用して成「8割くらいの仕事では、シニアの方が優シニアは、長い人生経験に基づき常識をもちろん、過去の経験といっても、第一線でこのように、シニアを雇用するメリットはた企業がシニアを雇うメリットとは2023.68―――

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