エルダー2023年6月号
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功している企業は、いくつもあります。幸せに働くシニア期を実現するために、働――9戦に臨むために頭を切り替えることが大事でく人自身が定年前に考えておくべきことはどのようなことでしょうか。郡山 定年には三つあると考えています。一つは法律や就業規則などに制度として定められている「形式定年」。二つめは知力・体力が衰える「自然定年」。そして三つめが、身の振り方を自分で決める「実質定年」です。国の施策や会社の定年延長で「形式定年」が何歳になっても、自身が働きたいなら、あるいは働く必要があるなら、年齢にかかわらず働き続けます。ただ、働く能力がピークを迎えるのは45歳前後といわれるように、「自然定年」を迎える以前と同じようには働けないという現実から逃れることはできません。そこで、自律的に「実質定年」を決めて、その前後でマインドセットを切り替えていく必要があります。どの定年も、そこで職業人生が終わるわけではなく、新たな職業人生の始まりです。「実質定年」をはさんで職業人生を前後に分け、後半す。後半戦は、環境が180度変わります。野球に例えると、前半戦はプレイヤーとしてフィールドで戦い、ライバルたちとレギュラーの座を争ったり、個人成績を競い合ったりする競争がくり広げられます。厳しい勝負の世界ですが、見返りも大きく、それはビジネスの世界も同じです。前半戦は、より高い報酬や地位を目ざして競争に明け暮れる環境で戦います。しかし、後半戦は違います。野球選手もプレイヤーを引退し、サポートする側に回ります。サポートする仕事とは、コーチなどのほか、グラウンド整備や球場の清掃員、売店の店員などがあり、いずれも野球に貢献する立派な仕事です。そこは勝負の世界ではなく、働く人のモチベーションは、競争に勝つことや利益の最大化を求めることではなく、野球界という、自分が所属しているコミュニティや社会の役に立っているという満足感です。ビジネスの世界では、競争や上昇志向という環境で前半戦を戦ってきた人も、後半戦に臨んで意識を切り替え、だれかをサポートするとか、社会の役に立つことに喜びを見出す境地で仕事ができれば、幸福な人生を送れるはずです。前半戦のときのように、勝ち負けや報酬にこだわったり、不安や悔しさで眠れぬ夜を過ごしたりすることはなく、いつも穏やかな気持ちで世のため人のために仕事をすることに、深い満足を覚えるようになります。私自身、前半戦に比べて、後半戦の幸福度は何倍も何十倍も高いことを実感しています。するわけではありません。競争があるからこそ、社会の進歩や豊かさが生まれるわけですから、前半戦のような環境やモチベーションは大事なことです。ですから、その環境に身を置く間は、退職準備のための副業などは考えず、全力で前半戦を戦ってほしいと思います。そうでないと、社会や会社が持ちません。そして、「自然定年」を迎える45歳前後から、後半戦への頭の切り替えの準備を始めてはどうかと考えます。延長線上にはない」ということ。それまでの仕事や地位、報酬にこだわらず、どんな仕事でも、どんな報酬でも、やれる仕事はやってみるという姿勢が大切です。仕事を選り好みせず、役に立てること、年を重ねてもできそうなことは何かという軸で考えるとよいでしょう。企業にはどのようなことを望みますか。とはいっても、前半戦のような働き方を否定切り替えのポイントは、「後半戦は前半戦のシニアの採用や活用を成功させるために、人生の前半戦と後半戦でマインドセットを切り替えるシニアの採用を成功させるうえで過去の経歴は役に立たないエルダー特集シニアの“強み”を活かし会社の“弱点”を埋めるシニア人材採用

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