エルダー2023年6月号
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■■■■■― 昭■夫■さんと一緒に働きましたが、井深さんは、郡山 先ほどいったように、企業はシニアを雇用することでメリットがあるので、どんどん採用して、活用してほしいと思います。ただし、厳しいいい方になりますが、働いてもらう価値のない、役に立たないシニアは、絶対に雇ってはいけません。遠慮することは一つもありません。採用する価値のある人材かどうかを判断するのに、過去の経歴は役に立ちません。「以前はどこの会社でどんな役職だったか」ということは、その人を採用して期待通りに仕事をしてもらえるかどうかを見極める決め手にはならないのです。特に大企業で役職にあった人が、かつての在職時の成果を語るとき、その成果は、その人個人の成果とはいい切れないものです。大企業の役職者は、優秀な部下に囲まれ、仕事に使うシステムなどのインフラも充実しています。そうした条件があるからこそ、役職者の率いる組織が成果をあげているのであって、そんな元・役職者が身ひとつで中小企業に来ても、期待に応えられる保証はないのです。私は、ソニーで、創業者の井■深■大■さんや盛■田■企業経営者が好んで使う「原点回帰」や「創業の精神」という言葉が大嫌いで、「あんなものを大事にするようでは、ソニーの将来はない」といっていました。〝過去を引きずることに意味はない〟ということです。盛田さんも、「過去には何の価値もない。将来だけが価値がある。現在は将来のためにのみ使うべきだ」とよくいっていました。過去をふり返っても将来は見えてこないということは、採用側の企業だけでなく、シニア自身にも強調しておきたいことです。後半戦の仕事探しは、まず過去を捨てることから始める必要があります。過去に何をやってきたかより、いま何ができるかが問われるのです。人材を採用するのに履歴書はつき物ですが、私は履歴書が要るのは仕事人生の前半戦であって、後半戦に履歴書は要らないと思っています。高齢者雇用を促進するのに、定年延長などで社員の雇用を延長するのと、外からシニアを採用するのとでは、どちらがよいとお考えですか。郡山 会社が期待する人材か、きちんと仕事をしてもらえるかどうかは、実際に働いてもらわないとわかりません。その点、もともと働いていた人の雇用を延長し働き続けてもらう方が、外から採用するよりも安心できる面はあるでしょう。ただし、前半戦と後半戦では、仕事の内容や期待する役割が違うのです。定年を延長しても、ほとんどの場合、それ以前の仕事や役割をそのまま延長するわけではありません。過去にとらわれず、後半戦の新たなスタートラインに立つというマインドセットを求めるのであれば、もともと会社にいる社員の雇用延長も、外からの採用も、変わりはないと思います。す。働く能力が低下する「自然定年」をだれもが避けられない以上、プレイヤーとして働くことに定年を設けなければ、能力の落ちた人がいつまでもフィールドに立ってプレイする事態を招きます。いわば〝老害〟です。これでは企業はとても持ちこたえられません。ですから「形式定年」は企業にとって必要なことです。にとってはあまり意味のあることではありませんが、企業にとっては、延長することで、社外からよいシニア人材を雇える可能性が高まります。60歳定年だと65歳の人は採用しづらいですが、70歳定年なら65歳以上の人も抵抗なく採用できるわけです。このように、定年を延長しておいて、外からよいシニア人材を採用するというのも、これからの社会の望ましいあり方ではないでしょうか。「定年」という制度は、私は必要だと思いまその「形式定年」を延長することは、働く側定年延長で、シニア人材を外部から採用する機会が広がる2023.610

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