躍についてブレーキとアクセルを同時に踏んだような不安定さを生み、それによる新たなミスマッチも発生しています。では、時代に合った会社ならばシニアを迎えるために適しているといえるのでしょうか?時代に合ってさえいればよいわけではありませんが、実際にシニア人材を採用し、上手に活用できている会社の様子を聞くと、シニア採用にかぎらず、さまざまな面で時代に即した体制や制度、マインドに触れることができます。例えば、私たちを介して60代の社員を採用した中古車販売店があります。この会社は決してシニアを優遇しているわけでも、シニアの比率が高いわけでもなく、20代から60代まですべての年齢層がバランスよく活躍していました。さらにその会社の社長は私たちに「60代がいるから20代を採用できる」とすらいっています。少子高齢化で人材不足が激しい業界では、「60代に経験とスキルを発揮してもらわなければ、20代を採用して育て、新しい技術に対応していくことすら不可能になる」とのことでした。特定の年代の採用を強化するのではなく、まんべんなく採用することで、それぞれの年代のよさが活かされ、全体の成長につながるそうです。ほかの企業でも、シニアが活躍しているところはシニアだけでなく幅広い年代が活躍していることが多いです。やはり私たちが60代の人材を紹介した税理士事務所では、20歳から74歳まで幅広い年齢層が活躍しており、シニアだけでなく育児中の方なども活躍しやすい環境が整っていました。時間や場所に縛られずに働ける環境として、テレワーク環境をコロナ禍前から整備するなど、時代を先取りした企業運営が、結果的にシニアも含めた多様な社員の働きやすさにつながっているようでした。世の中ではシニアが長く働き続けることに対して若者からの反発もあり、シニアと若者の対立構造も一部で見られますが、私たちが見てきた事例からはむしろ、全年齢層が活躍しやすい環境をつくることが、シニアや若者にとってもよい環境となっているように見られます。時代の変化に取り残されているとミスマッチにつながりやすいことは先にも述べた通りですが、特に従来の価値観・先入観で現実と違った見方や判断の仕方をしてしまった場合に、ミスマッチが発生します。価値観ではすでに古い可能性があり、「病気がち」、「無理のない時短勤務が望ましい」、「IT・インターネットに弱い」、「新しいことを学びたがらない」、「頑固」といったシニアのイメージは、実態と異なる「バイアス」であることが多くなりました。「バイアス」は、ネガティブなイメージだけではありません。上記でも「無理のない時短」をあげていますが、よかれと思った配慮も逆効果になる場合があります。ほかの社員と同じデジタルツールではなく、シニア社員のみ紙の書類を認めるといった社内ルールをつくると、喜ぶ人もいる一方で、疎外感や引け目を生み出し、シニア社員を孤立させてしまう場合があります。べきではないという理由から、デスクワークへの配置転換を行ったり、60代で再雇用となると出勤日数が減ったりする社内ルールを敷く企業も多いのですが、それを嫌って転職する人が少なからずいます。体力の低下や健康不安の拡大は実際にあるものの、個人差も大きいうえ、同じ年齢でも年々健康なシニアが増えているたシニアの働き方についても、数年前の情報やミスマッチにつながるシニア人材についてのシニアはITに弱いという思い込みから、また、シニアは体力が低下し、無理をさせるシニアを活用できている企業の職場環境とは?シニアへの「バイアス」がミスマッチを生む13エルダー特集シニアの“強み”を活かし会社の“弱点”を埋めるシニア人材採用
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