めました」ただし、経験を活かせるとはいえ異業種への転職である。当初は戸惑いもあったと話す五十嵐さん。「とにかく社員が若くて女性が多い。私が元いた現場は、100人の社員のうち女性は1〜2人程度。自分の娘と同じくらいの年齢の人が多く、『どう接したらよいのだろう?』と思ったのが当時の率直な感想です」とふり返る。同時に、若い社員のほとんどがものづくりの経験がなく、生産管理のノウハウがないという状況でもあり、五十嵐さんは「私だったらここでいくらでもお手伝いができる」と思ったという。大企業から中小企業への転職。五十嵐さんは入社にあたり、同じく大企業に勤務した後に中小企業に転籍した知合いにアドバイスを求め、「中小企業は大企業と全然違う。まずは自分で掃き掃除から始めないといけないよ」という意見をもらったという。大企業では部下がいて指示を出せばあたり前に動いてくれるという認識を、中小企業では捨てたほうがよいという例えだった。五十嵐さんは実際に入社してたしかにその通りだと思い、商品を修理する際などは、自分でドライバーを持って率先して動いた。自分自身が早く現場を把握するためにも、必要だったとふり返る。また、五十嵐さん以外にも同時期に入社したシニアが数人いたそうだが、過去の経歴を自慢するように話したり、自己主張ばかりが強い人は、周囲に受け入れられるのがむずかしく、自分から辞めていったという。「大手企業を定年退職した人材と、中小企業とのマッチングを考える場合、周囲とのコミュニケーションをいかに円滑に図っていくかは、重要な課題だと思います」と五十嵐さんは語る。また会社視点でシニアをどう活かすかを考えた場合は、「シニアの経験を活かせる仕事を、会社がいかに与えられるかが問われるのではないでしょうか。いままで経験したことがない仕事を任せてもうまくはいきません。それを見た若い人からすれば、『あの人、何をしに来ているの?』とネガティブな感情を持たれてしまうこともあるでしょう」と話す。シニア人材を雇用する側、雇用される側の両者の視点から、たいへん参考になる貴重な意見である。五十嵐さんの入社によって得られた成果について、五十嵐さんの入社当時から一緒に働いている社員の一人は、「事業のウイークポイントがはっきりとわかっており、改善を図った結果、商品クレームが著しく減少した」と話す。また、大石社長からは、五十嵐さんが入社3カ月目で「品質管理業務を改善することによりコスト削減が実現できる」と提案し、具体的な目標値を示したうえで実現に至ったという話をうかがった。入社当時の状況について、五十嵐さんは次のようにふり返る。「入社当初は、おもに修理サービスを担当していたのですが、改善点が多々ありました。商品へのクレームが多く、営業の社員もその対応に追われて疲弊していることを感じました。社員がみな若く、ものづくりにかかわってきた人がいなかったので、改善策のノウハウがなかったのです。まずはなぜそうなってしまうのか、品質会議でロジックをはっきりさせました。そして一つひとつの改善策について目標を立てて具体的・計画的に実施していきました」して、あたり前のことをあたり前にやっていけば、クレームも自然に減少し、結果的にコストセービングに貢献することができると考えていたのである。五十嵐さんはものづくりの現場にいた人間と中小企業では通用しない大企業の流儀大企業での品質管理の経験が結果として現れる17エルダー特集シニアの“強み”を活かし会社の“弱点”を埋めるシニア人材採用
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