エルダー2023年6月号
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きたいという人は少ないなかで、仕事を切り出して説明をすると、多くのシニアに関心を持ってもらえます。また、事業所側からすると、有資格者の介護職員の業務負担が軽減するので、施設の仕事が滞りなく回るようになります。仕事の切り出しを行うことにより雇用する人数は増えますが、結果的に全体の人件費が下がったという声も聞きます」(一ノ宮マネージャー)仕事の切り出しを提案した結果、事業所において介護周辺職種の採用意欲が高まり、2022年度は34人の採用が決まった。マッチング支援重点業種介護と同様にシニアの採用意欲が高い警備や、ビル・マンション管理(メンテナンス)、清掃のサービス分野においては、ネガティブな先入観を反転させるブランド戦略のもと、リーフレットを作成し、同業種に絞った相談会を実施した。「警備・清掃の仕事は、身近なところに豊富にあります。街のインフラに密着した社会の役に立てる仕事として、『だれでもできる=私にもできる』とネガティブイメージを反転させてイメージアップを図っています」(一ノ宮マネージャー)相談会と同日に企業向けにセミナーを実施し、ミドル・シニアを積極的に採用することで企業にとってメリットがあることを外部の講師を招いて伝えるなどの働きかけを行い、その結果、2022年度は警備・清掃分野で4人が採用に至った。これら二つの重点業種に加えて、三つめの重点業種に「まちづくり・地域共生」がある。ボランティア、セカンドキャリアの支援という点で、ミドル・シニアを地域活動に送り出す。2023年2月には50〜59歳を対象にしたセカンドキャリアセミナーを実施した。「『10年後のありたい姿を明確にしよう!』というテーマを掲げ、定年退職を迎える前にセカンドキャリアを考えるきっかけを持ってもらうためのセミナーを開き、ミドル・シニアが在職中からセカンドキャリアを形成するための支援を行っています」(木村副主幹)これらの取組みはチラシやホームページ、SNSなどで情報発信し、普及・啓発に努めている。苦労して採用活動を行い、人材の採用に至っても早期に退職してしまうという、いわゆるミスマッチを企業は避けたいものだ。ミスマッチが起こる原因について、一ノ宮マネージャーは次のように説明する。「高い能力を持った経験豊富な人材を希望していた企業で、シニア人材の採用に至ったことがあります。生産管理を希望していた方で、生産管理担当として採用されましたが、現場ではマネジメント業務を含む多くの仕事を任されるようになり、間もなく退職したそうです。大企業出身であったり、能力のあるシニアの方は、『年金を受け取りつつ、自分が持っている技術の部分だけ中小企業で活かして働きたい』と思っている方が多いように見受けられます。また、元気に見えても、若い世代と比べれば体力面で落ちることは否めません。60〜70代はとても真面目な気質の世代なので、一つの仕事をきちんとやり遂げますし、無理をしてがんばることもあるので、そこに甘えて想定以上の仕事をお願いしてしまうと、突然辞めてしまうということが起きてしまいます。『この人は仕事ができる』といって周りが欲張っていろいろと任せずに、シニアに配慮する姿勢があると定着につながると思います」カンドキャリアを考えて勉強した人は、再就職先で定着しやすい傾向があるという。なぜなら、一方のシニア側については、50代で自分のセ②サービス分野の就労促進ミスマッチを防ぐために双方が取り組むべきこと21エルダー65歳まで再雇用で働いてもその後の再就職先が特集シニアの“強み”を活かし会社の“弱点”を埋めるシニア人材採用

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