エルダー2023年6月号
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豊富にはないことを知っており、定年後は早めに再就職先を探し始め、堅実に求人が豊富な業種を選ぶが、だからといって自分の働き方の条件は譲らない。そうした姿勢でじっくり仕事を選んだ結果、条件にマッチした職場に就職が決まったというケースは好事例として多くのミドル・シニアの参考になるだろう。「雇用延長の場合、多くは、給料は減っても同じ会社に5年いることができます。ただし、それによって65歳を迎えてから再就職活動をするよりも、60歳で市場に出た方が有利ですし、その後10年間働けます。そうした知識のある人たちは、再就職先を探す際に『定年がない』、あるいは『定年70歳』のような、長く働ける会社を条件にしています」(一ノ宮マネージャー)よいシニア人材を採用したいと考えている企業は、定年年齢の見直しについて一考の余地があるといえよう。NEXTワークしずおかは、2024年度に事業が終了した後、必要性を整理して運営方法を検討していくという。「働くことを希望するシニアが、ハローワークに行くか、シルバー人材センターに行くか、自分で選んで動かなければいけなかったところを、本事業の窓口ではそれぞれの機関が連携して道案内を行っています。この窓口業務が今後も継続して必要なのか、事業を走らせながら検討していくことになります。この先10年も経てば、いまの50代が60代になるのでだいぶ状況が変わっていくはずです。もともとは厚生労働省の高齢者雇用対策事業の受託により始めた事業ですが、シニア以外にも働きたいけれど働けない、例えば就職氷河期世代など多くの就労困難者がいます。静岡市としてはシニア就労支援で蓄積したノウハウを、各部門が連携する協議会のなかで議論することで、別の対象者や世代にも展開していきたいと考えています」(木村副主幹)相談窓口のスタートからシニアの就労支援を現場でサポートしてきた一ノ宮マネージャーは、「自社の社員を雇用延長して70歳まで働いてもらうことも大事ですが、新しい風を入れるという点で、積極的にミドル・シニアを中途採用して門戸を開いてほしいです」と人材不足解消を課題にする企業に向けてメッセージを送った。企業とミドル・シニアの両者が早期のセカンドキャリア形成に取り組めば、労働市場の活性化につながり、働きたい人だれもが生涯働ける社会が実現するのも遠い未来のことではなくなるかもしれない。「介護関係の仕事に就くとは考えてもいなかった」とふり返るAさん(70歳)は、前職を定年退職した後、自宅近くでできる仕事を探していた。そんな折、NEXTワークしずおかの窓口で相談したところ、高齢の男性でもできる有料老人ホームの用務員の求人を案内してもらい、就職するに至った。Aさんは「利用者さんと接することはほとんどなく、この仕事ならできるかなと思いました。効率的な段取りを考えたり、スタッフとアイデアを出し合ったり、仕事の工夫ができるのがやりがいにつながっています。働きやすい点は家から近い場所にあり、勤務時間の融通がきくところ。館内を動き回るので適度な運動になり、体力がつきます」と、仕事の充実ぶりを語った。介護業務の切り出しから洗濯・清掃の職を創出し採用に至る働きたいだれもが生涯働き続けられる社会づくり「NEXTワークしずおか」でマッチングしたシニアの2023.622 事例

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