第3回高齢社員の安全と健康を守る方法は?マンガで学ぶ高齢者雇用集中連載内田教授に聞く高齢者が働く職場で特に注意すべきは労働災害です。高齢者の労働災害発生率はほかの年齢層に比べて高くなっています。20歳未満の若者の労働災害発生率も高いのですが、その原因は仕事の知識や経験が浅いためと考えられます。一方、高齢者の場合、長年の経験を持ち、仕事も熟知しているため労働災害は起きにくいように思われますが、年齢とともに反応速度やバランス感覚が低下するなどの要因で「頭ではわかっていても体が以前のように動かない」ことから事故が起こってしまうようです。企業や職場では、高齢者に生じやすい体力や五感の低下をふまえ、それらが原因で起こりやすくなるヒヤリハットや事故を想定し、防止する工夫が必要となります。体力低下への対応として、重量物運搬の際は転倒や腰痛の恐れがあるため、機械化により高齢社員が荷物を持たずにすませるか、ロボットスーツの着用などが考えられます。職場内で移動をともなう場合は動線を短縮化したり、複数の階を行き来しなくてすむよう同じ階に仕事をまとめたりして疲労軽減を図ります。疲労回復のために休憩室を見直し、横になってゆったりできる畳敷きに改装する会社もあります。「まだまだ自分は大丈夫」と考える高齢社員がいままでと同じペースで仕事をしてしまい、知らず知らずに疲労が重なって事故につながる恐れもあります。上司や同僚は高齢社員の仕事ぶりを見ながら、ときには抑え役になることも考えてください。職場の安全とともに、健康管理も欠かせません。高齢社員が定期健康診断を受ける際、高齢社員向けにメニューを追加している会社があります。また、再検査が必要と判断された場合は本人任せにせず会社が必ず受診させることも必要です。ここでは高齢社員の労働災害防止と健康管理について述べてきましたが、会社が真剣に取り組めば高齢社員はもちろんのこと、若手や中堅社員にとっても安心・安全な職場となります。29エルダー内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。プロフィール解 説解 説解 説 加齢にともない身体機能も低下していく高齢者は、若者に比べて労働災害の発生率が高いだけでなく、けがなどによる休業も長期化しやすい傾向にあります。生涯現役時代を迎え、働く高齢者が増えていくなかで、企業が職場環境の改善や健康管理に取り組むことの重要性について、東京学芸大学の内田賢教授に解説していただきました。高齢社員の労働災害防止と健康管理の取組みはすべての社員の安心・安全につながる教えてエルダ先生! こんなときどうする?Season2高齢者雇用のポイント
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