エルダー2023年6月号
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開口一番、日本の高齢化を憂えた阪口さんは、常に頭の中で高齢者の未来図を描いている。だから言葉に説得力がある。地域貢献を目ざして生涯現役を実現するためにループを発足。同年10月には近隣に第2農園もでき、旬の野菜を減農薬で栽培し、収穫物は直売所や市のイベントなどで販売するように整備をしました。自然相手ですから苦労もありますが、青空のもと土を耕し、旬の野菜を育てるために体を動かせる喜びが営農グループの醍醐味です。また、営農グループは循環型農業にも取り組んでいます。シルバー人材センターでは家庭などの植木の剪定も請け負っており、その際に出る大量の枝葉を細かく砕いてチップにするためのチップ工場を2014年に開設しました。現在、営農グループに登録しているのは約ています。私は、水・土・日曜日をのぞき、朝8時から12時まで営農事業に従事し、販売にも参加しています。畑に出る日は5時30分に起床、まず自分の畑を見回ってからシルバー農園へ行き、帰りに自分の畑をもう一度見回って家に帰ります。高齢者ほど自分のルーティンを持つことが大事だと私は思います。所沢市が位置する武蔵野台地は、昔から良質の小麦産地でした。また、所沢市はうどんづくりが盛んなこともあり、私たちは「小麦栽培から製麺、販売まで一貫してできないか」と考えました。そこで、2017年に新たに休耕地1600坪を借り、小麦の種をまきました。麦踏みには近くの小学校の児童が協力してくれました。収穫した小麦は、当センターの西新井支所にある「麺工房」で製粉機にかけます。いくつかの工程を経て誕生したのが「地産地消型のシルバーブランド・所沢うどん」です。いまでは市内のさまざまなイベントに出品し、「のど越しがよく、とてもおいしい」など嬉しい声をいただいています。一方、私は地域貢献の一環として「小■手■指■メンズクラブ」という会に参加しています。公民館のメンズカレッジ卒業生が「会社人間から地域人間へ」を合言葉に、2002年に結成しました。現在では男性ばかり50人ほどの会員がスポーツ交流や文化も含めた幅広い視点で親睦を深めています。今年で22回目を迎える「アートでせまるオヤジ達展」と題したアート展は、すっかりおなじみになりました。私たちは地域貢献を大切にし、ボランティア活動として国道463号線のバイパスに花壇を作り、清掃作業もしています。毎月最終土曜日のメンズクラブロードサポートには私も毎回参加、清掃の後の懇談はとても楽しく、さまざまな世界でがんばってきた仲間たちとの交流は学ぶことが多いです。冒頭の話に戻りますが人口の3割を占める高齢者は自らの人生の充実を目ざすとともに、自分たちが地域貢献を通じて社会を牽引していくという気概を持とうではないですか。農業の世界でも技術が進歩し、高齢者もIT社会に対応していかなければなりません。新しい情報をつかむアンテナを広げておくためにも生涯学習の継続が必要だと、55歳で入学した放送大学でいまも学び続けています。仕事ではないかと私は考えます。自然相手の農業はていねいに几帳面に向かい合う仕事です。情報機器分野で働いていた私などはどうしても物事をスピーディーに進めがちで、営農の仲間から教わることも多いです。もちろん実際の農家では高齢化が進み、後継者不足という切実な問題がありますが、農家の方々から指導をあおぎ、農地のことでも協力をいただいて営農事業を展開していきたいと思います。農業のことをよく知らない高齢者にもその魅力を伝えて、一緒に生涯現役を目ざしたいものです。市内の11地区すべてのセンターに営農事業を発足させ、高齢者が社会を支える場としたいという思いを胸に、今日も畑にでかけ、大地の声に耳を澄ましています。「生涯現役」とは仕事だけではありません。一生続けられる農業は高齢者に合っている高齢者に聞く3720人、そのうちの10人ほどが交替で畑を守っ■エルダー

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