エルダー2023年6月号
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若年性認知症患者は約3万5700人国も患者の就労支援に本腰認知症は、もともと高齢になると増え數井 る病気なので、患者も実数として増えています。推計ですが、2025年ごろに、患者数は700万人に達し、65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。65歳未満の「若年性認知症」の人数に関しては、全国で推計約3万5700人とする調査結果があります※1。国は、2019(令和元)年に閣議決定した「認知症施策推進大綱」で、若年性認知症に関する対策を打ち出し、若年性認知症患者の就労支援に本腰を入れ始めました。2022年4月の診療報酬改定では、治療と仕事の両立支援に関する診療報酬の対象疾患として、若年性認知症が新たに加えられています。數井 啓発が徐々に進んできて、これまでは診断を受けず、表に出ていなかった人が受診するようになったことが大きいと思います。「18歳以上65歳未満で発症する認知症」を若年性認知症と国は定義づけていますが、高齢の発症でも、若年の発症でも、脳の中の病理変化に違いがあるわけではなく、病気としては変わるものではありません。国がなぜ、若年性認知症を高齢の認知症と分けて対策を進めるのかというと、若年性認知症の患者は働き盛りで、家族を養っているケースも多いので、まずは経済的な支援が必要になってくるからです。また、若年性認知症を発症した人の家族は、「自分もいずれなるのではないか」という不安を抱えがちです。若年での発症には、大きな経済的損失、精神的打撃があるため、高齢者とは別建ての施策が必要になります。若年性認知症の場合は、病気に対する數井 学医学部附属病院で15年間働いていたのですが、大阪は都会で人口が多いこともあり、若年性認知症患者の実数も多い状況でした。患者は40代後半から50代が中心で、50代の割合が高かったと記憶しています。50代ぐらいで発症した人の場合、仕事を辞めてしまうと行き場がなくなってしまい、家族への影響、深刻さは、高齢のケースとはまた大きく異なるのです。數井 す。認知症の場合、発症年齢にかかわらず、症状がある程度進んだ段階で初めて医師の診断を受けるという人が多く、若年性認知症では仕事を辞めてしまってから受診に来るケースがほとんどです。われわれ医師の立場からそうですね。高知大学の前は、大阪大まずは早期に診断することが大切で―最初に、認知症患者に関するデータ、国の就労支援の施策などについてお話しいただけますか。―若年性認知症の患者が増えているということなのでしょうか。高齢の認知症と若年性とに症状の違いなどはありますか。なかで、若年性認知症患者の両立支援の必要性を実感されていたということですね。として、『若年性認知症における治療と仕事の両立に関する手引き』の作成にもたずさわられています。認知症の患者が仕事を続けていくために、ポイントとなるのはどんなことでしょうか。―數井先生ご自身も、これまでのご経験の―數井先生は、国の検討委員会のメンバー2023.62※1  日本医療研究開発機構認知症研究開発事業「若年性認知症の有病率・生活実態把握と多元的データ共有システムの開発」(令和2年3月)高知大学 医学部 神経精神科学講座 教授 數井裕光さん

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