エルダー2023年6月号
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形ができあがり、現在も多くの企業で行われている新卒採用、人材の内部育成・登用、年功賃金、60歳定年制などを特徴とする、「メンバーシップ型」の長期雇用慣行に基づく典型的な日本的賃金人事制度のイメージを年齢軸に描いたものです。以下、その実務的なポイントを説明しましょう。(1)初任給賃金の起点は、高校卒・短大卒・大学卒など学歴別の新卒初任給です。図表1の総合職・現業職・一般職のような「コース別管理」による違いを除いて、仕事内容による初任給の差はほとんどありません。この点が、採用する職種や職務(ジョブ)のグレードによって個別に賃金を決める職務給とは大きな違いです。近年、新卒採用の競争激化を背景に初任給を大幅に引き上げる企業が続出し、年功賃金のバランスが大きく揺らぎはじめています。(2)年功賃金(定期昇給、昇格昇給)入社後、図表1でメンバーシップ型雇用(M)の正社員は、毎年の定期昇給や随時行われる昇格昇給によって賃金が年功的に増えていきます※1。ただし全員一律の年功賃金はさすがに少なくなり、幹部候補としての成長が期待できるポテンシャル人材(総合職)、現場の熟練や専門性を期待する技能人材(現業職)、それ以外の定型日本企業の典型的な1図表1賃は金、・戦人後事の・昭和雇か用ら慣平行成にかけて基本日本の賃金制度と「ジョブ型」賃金制度2023.638※1  図表1の年功賃金の傾斜が示す昇給カーブや賞与、退職金の支給水準は企業の規模や収益性により大きな差があり、特に中堅層以上の役職者になると、企業による年収や生涯賃金の格差も大きく広がります図表1 日本企業の典型的な賃金・人事・雇用慣行(昭和〜平成)学卒初任給M : メンバーシップ型雇用J : ジョブ型雇用 ©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載退職金賞与・一時金年功賃金定期昇給昇格昇給公的年金学校就職結婚(家族形成)管理職・M総合職・M現業職・M一般職・準Mパートタイマー・J役職定年制コース別管理60歳定年制65歳定年後再雇用・M同・準M同・J株式会社プライムコンサルタント 代表 菊■■谷■寛■■之■■ 従来型のヒト基準の日本的人事制度が制度疲労を起こし、年齢や性別を問わず人材が 従来型のヒト基準の日本的人事制度が制度疲労を起こし、年齢や性別を問わず人材が活躍できるシンプルな雇用・人事・賃金制度に対するニーズが高まっています。今回は、メンバーシップ型と呼ばれる日本企業の雇用・賃金システムの特徴をふり返り、諸外国のジョブ型雇用・賃金との際立った違いを解説します。22第2回シニア社員のためのシニア社員のための「「ジョブ型ジョブ型」」賃金制度の賃金制度賃金制度賃金制度賃金制度ののつくり方つくり方

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