業務担当者(一般職)などの「キャリアコース」で正社員を分けたり、年功・職能や職務・役割などで「等級」に分ける人事制度をつくり、そのキャリアコースや等級、評価の枠内で昇給・昇格の上限を決める手法が主流となっています。(3)管理職の待遇時間外手当が支給されない管理職には、その代替として役職手当や管理職手当を支給したり、一般社員よりも一段高い賃金を支給するのが通例です。管理職は定期昇給の対象外とし、年俸制や役職別・等級別の「シングルレート」と呼ばれる定額賃金に切り替えたり、評価によって金額が上下する「洗い替え型」や役割給/職務給に切り替える例も見られます。若手人材の早期登用と組織の活性化を図るため、管理職のポストに55歳前後の「役職定年制」を設け、役職離脱後は部下のいない専門職や専任職として待遇する会社も少なくありません。(4)賞与夏・冬あるいは決算時に、賞与・一時金を会社業績や労使交渉に基づいて支給します※1。属人給としての継続性や、生活給としての安定性を重視する毎月の賃金と異なり、会社業績や個人の評価査定によって、支給の都度金額を弾力的にリセットできる点が賞与の大きな特徴です。ただ、長年の慣行が重なり、業績にかかわらず賞与の支給月数からほぼ固定的に支給している企業も少なくありません。(5)退職金・年金長期勤続を奨励し、老後の生活費を補填する最終給与としての退職金・年金は、所得税法上、退職所得控除の税制優遇措置が講じられ、長期勤続者に有利な取扱いがなされています。しかし途中退職する従業員や中途採用者にはその仕組みが不利に働くため、企業間の労働移動が阻害されている面も否めません。(6)定年制と継続雇用厚生労働省の調査※2(31人以上企業)では、定年制の廃止および65歳以上の定年制を合わせた企業は約4分の1と少数派で、残り約4分の3のほとんどは60歳定年制です。定年後の継続雇用を希望する者は、65歳まで勤務延長または再雇用のかたちで勤務できますが、定年前の仕事のまま正社員の労働条件を継続する勤務延長は一部の管理職や専門職にかぎられるのが一般的です。大多数の企業は、定年前の賃金待遇を8割〜6割程度に切り下げる有期契約の定年後再雇用によって高齢者の雇用確保義務に対処しているのが実情です。(7)パートタイマー等の非正規雇用定年後再雇用社員の賃金待遇を見直すうえで、同じ非正規雇用の取り扱いは見逃せないポイントです。これまで多くの企業では、パートタイマーなどの非正規社員は職務を限定したジョブ型有期雇用による低賃金を適用し、正社員の昇給制度や家族手当・住宅手当などの生活補助手当、賞与、退職金などは対象外とされてきました。ただし2021(令和3)年4月からパートタイム・有期労働法が全面施行され、同一労働同一賃金の取組みが進むなか、最低賃金の大幅な引上げや人手不足を背景に、近年パートタイマーなどの賃金待遇を見直す企業が少しずつ増えており、高齢社員の賃金待遇にも影響が及びはじめました。2日本企メ業ンのバ人ー事シ・ッ賃金プ制型度雇は用、の市特場徴価値に基づき、組織・職務基準で人材を調達する諸外国のジョブ型とは際立った違いがあります。日本企業の場合、あらかじめ会社が確保したストック人材がいて(内部労働市場意欲・適性を見ながら会社がやらせたい仕事を割り振るという「人的資源管理論」に基づくメンバーシップ型の雇用・人事慣行が主流となっています(図表2の左)。最大の特徴は、組織の正規構成員である「正社員」の身分として採用し、定年までの長期継続雇用を保障するかわり、個々の従業員に任せる職務(ジョブ)の内容は会社の裁量権の範囲内で無限定に決められる点にあります※3。)、その能力・シニア社員のためのシニア社員のための39※2 厚生労働省「令和4年6月1日現在の高年齢者の雇用状況等」※3 「日本における雇用の本質は職務(job)ジョブではなく、会員/成員(membership)であると規定」(濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何かー正社員体制の矛盾と転機』25ページ、2021.9、岩波書店)エルダー「「ジョブ型ジョブ型」」賃金制度賃金制度ののつくり方つくり方
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