そのメリットは、新卒一括採用の多様な職務配置からはじまって、外部環境や組織の内部事情の変化に対して柔軟な人事異動が任意に行え、企業内で低コストかつ計画的に人材を育成・登用できることです。途中退職者や長期欠勤者が出ても、当面社内で人材をやりくりできます。ただし配置・異動の都度賃金待遇が変わったのでは、人事の不公平が問題になったり、雇用関係も不安定になります。会社としては正社員の採用や人事配置を一元管理し、職務内容が多少変化しても安定した賃金待遇を行う必要がありました。こうして職能資格制度のような年功・能力基準の人事処遇制度を軸に、ヒトの身分・資格・ポテンシャルに値段をつける職能給など日本独特の「属人給」が生まれたのです。しかしヒト基準の人事賃金制度には、無視できない欠陥もありました。一つは、「資格と役職の分離」というロジックが独り歩きし、人件費の肥大化を招いたことです。一度管理職になった従業員はそのポストを外れても職能資格は下がらず、実際の職務内容や業績とは無関係に各人の賃金が既得権になってしまいました。二つめは、年功的な賃金待遇の副作用として仕事の評価基準があいまいになり、個人としても組織としても、成果や生産性に対する感度が低下したことです。なかには、評価制度もなく、事業経営に不可欠な経営計画や目標管理さえもない不思議な企業があったりします。三つめは、給料が保障されるとはいえ、会社の一方的な人事権で配置と職務が決まる状況では、従業員はどうしても受け身になります。会社への依頼心が助長され、よほど意思がしっかりしないと自身のキャリア形成に主導権を持つことができません。自律的な学習意欲や向上心がなければ、定年後の生活設計も絵に描いた餅になってしまいます。さらに、正社員を対象とするメンバーシップ型の人事管理は、無限定でフルタイムの働きを期待する男性・総合職中心の人材活用に偏りがちで、技術革新のスピードが早まり、人口減少社会において働き方改革が求められるなか、高度専門職や多様な働き方を求める女性・高齢者・外国人・障害者などの能力をうまく引き出し、活用することがむずかしいです。3これに設対計し・、導ジ入ョ手ブ型順雇用は、経営計画と業績見通しに基づいて事業主体で組織を編成し、ジョブの塊であるポストの職務要件に対し賃金を決め、社内外から最適な人材を発掘・配置します。多くの日本企業では職務内容の違いよりも、年功・能力など社内労働市場の人事序列に基づジョブ型雇用人事の特徴と外部労働市場内部労働市場日本のメンバーシップ型雇用ヒトに仕事をつけ、ヒトの能力・年功に人事考課で値段をつける職能給職能資格制度諸外国のジョブ型雇用仕事(ポジション)にヒトをつけ、市場価値に基づく職務評価で値段をつける職務給©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載図表2 メンバーシップ型とジョブ型の違い係長格主任格職員3職員2職員1M…ManagerS…SeniorJ…Junior職能型資格型役職型M-9部長格理事M-8参与次長格参事M-7課長格副参事課長補佐格S-6S-5主事S-4主事補書記J-3J-2主務係員J-1課長リーダーリーダー主任係員・正社員の人材ストックの中から組織運営・業務遂行の適任者に都度仕事を割り振る・組織・職務とは切り離し、社内の年功・能力基準による属人給で人材を安定的に処遇する資格と役職が分離部長課長課長主任係員・事業部長の裁量で人材を外部調達・登用 ・総額人件費管理に基づく生産性の高い組織づくりを行う・個人の自己学習・自己決定・キャリア自立を促す事業戦略と組織編制職務記述書事業部長部長課長リーダー一般スタッフ2023.640
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