エルダー2023年6月号
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賃金における考慮事項とも合致していますので、正社員と短時間または有期雇用労働者との間の労働条件の相違にも影響があると考えられます。記載が同一の正社員と短時間または有期雇用労働者の間では、労働条件の相違(主に社宅手当や地域手当など異動の有無による相違が説明されていた部分)については、合理性が説明できなくなると考えられます。単なる記載事項の追加ととらえるのではなく、これまでの働き方改革とつながりのある改正であることを意識しておくことが重要でしょう。裁量労働制について3裁量労働制には、企画業務型裁量労働制、専門業務型裁量労働制があり、これ以外にも高度プロフェッショナル制度という形で労働時間法制の柔軟化が図られています。しかしながら、これらの制度は、その導入要件などが相違しており、また、専門業務型裁量労働制については、適切な運用がなされていたとも言いがたい状況も散見されたことから、労働者の同意を得ることおよび同意の撤回に関する手続きをあらかじめ定めることを前提とした制度に変更となります。高度プロフェッショナル制度や企画業務型裁量労働制においては、事前の同意が必要とされていたことや、高度プロフェッショナル制度において同意の撤回手続きを設けることとされていた点が専門業務型裁量労働制にも及ぶようになります。また、裁量労働制が適用される結果、時間外労働の割増賃金が得られないにもかかわらず、通常の労働時間制である労働者と賃金がほとんど変わらないとなれば、裁量労働を行うにふさわしい職務であるのか、それに対する賃金として適正かという点についても疑義が生じます。そこで、裁量労働制の対象労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度を変更する場合は、事前に説明を行うことが適当であることなども設けられます。みなし労働時間の設定についても、業務の内容、適用される評価制度、賃金制度を考慮して適切な水準とし、相応の処遇を確保する必要があるともされており、職務内容と処遇のバランスに対する意識を高めていくことが求められているといえます。そのほか、健康確保の観点から、「労働時間の状況」について、労働安全衛生法により把握が求められているものと同一であることを明らかにするものとされており、管理監督者の「労働時間の状況」を把握するのと同様に、過重労働(目安として、月80時間の時間外労働を超える労働)が抑制されるように留意することも必要となります。また、健康・福祉確保措置を充実させることも求められており、労働時間の上限措置を決めておくことや勤務間インターバルの採用、深夜業の回数制限、年次有給休暇の取得促進などの措置を取っておくことが求められています。おり、この苦情処理制度については、制度の適用を受ける同意を得るにあたって明示することに留意するよう求められてもいるため、裁量労働制が〝定額働かせ放題〟とならないように、対象労働者側からの運用に対する苦情を受けて、改善を求められることも増えると考えられます。処遇に関する説明を明確に行っておかなければ、同意が撤回されて裁量労働制の適用が解かれたときの労働条件の変更(不利益な内容をともなうことが想定される)において、労使間で紛争が生じる恐れもあると考えられますので、留意が必要でしょう。また、苦情処理制度も設けることになって運用にあたっては、同意の取得と適用時の45エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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