つづくシニア人材には、仕事の実績だけでなく情報感度とフットワークも必要技術顧問から会社の重要な戦力に持ち寄って開発を行っていました。しかし、みなそれぞれの会社で技術を磨いてきたという自負はあるものの、自分たちだけでハードウェア製品を量産していくことが本当にできるのか、と自問すると、やはり限界があることもわかっていました。そこで創業してからすぐに、「自分たちに足りない技術や知識を持ったプロフェッショナルに学ぼう」と求人を行ったのです。求人の方法は、企業OBのシニア人材と若手の企業をマッチングするサイトで、「技術顧問的な立場として、量産用の設計経験がある方や、量産立ち上げをする際に製造に関する課題を解決された経験がある方がいいな」といった程度の期待感で求人を公開しました。公開後まもなく深谷さんから応募があり、そのキャリアを見てすぐに面接をお願いしました。深谷さんの実績は幅広く、長らく勤務されたNEC(日本電気株式会社)では集積回路の回路設計のほか、その関連業務としての特許出願・技術契約や、顧客への技術サポート、販売部門への市場開拓支援など、さまざまな業務にかかわってきた方です。NEC退社後も別の企業で技術顧問をされたり、マレーシアのトレーニングセンターで講師をされたりと、「すごく専門性が高い方に出会えた」という印象でした。当社に深谷さんは面接に訪れてくださり、そのたった一回の面接で社長も私も「この方に来ていただこう」と採用を即決しました。当社にとって運がよかったと思うのは、実は募集を行ったシニア人材とのマッチングサイトはそれほど認知度が高いものではなく、応募人数がほとんど見込めないなかで、早い時期に深谷さんから連絡をいただいたということです。つまり、深谷さん自身が情報のアンテナを張り巡らせて、「次は何をやろうか」とあれこれ調べるなかにそのサイトもあり、そこにポンと当社の募集が上がってきたので、すぐ気づいて応募していただいたのではないかと思うのです。もし、当社がシニア人材の採用を躊躇し、創業後2〜3カ月が過ぎてから「やっぱり募集しよう」となっても、すでに深谷さんは別の会社に採用されていたでしょう。やはり問題点に気づいたら即座に手を打つというのがスタートアップ企業にとっては鉄則だと思います。後の当社を見つけ、すぐに応募するというのはなかなかできないことだと思います。シニア人材の方が活躍の場を見つけるためには、高い情報感度と軽いフットワークが必要なのではないでしょうか。は、量産品製造におけるQCD(品質・コスト・納期)の最適化について教えてもらいました。ることができる品質の商品を量産するためのノウハウです。実際に当時設計したものを、10年目のいまでも使い続けているユーザーもおり、求めている製品をつくりあげることに深谷さんの知見は大きく活かされました。いたのですが、その後もさまざまな課題が解決されるにしたがって、少しずつ深谷さんの役割は変化し、10年後の現在も重要な戦力として伴走していただくことになっていくのです。一方で、当時73歳だった深谷さんが、創業直技術顧問的な立場で契約をした深谷さんに具体的には、信頼性が高く、何年も使い続け採用契約後は、週1回程度出社してもらって47エルダー創業間もないころの深谷さん(左)と熊谷取締役(右)(写真提供:株式会社Photosynth)20代の若者が数人集まって起業したばかりのスタートアップシニア人材奮闘闘記10年間伴走し続ける
元のページ ../index.html#49