エルダー2023年6月号
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早期診断からの両立支援がもっとも重要「専門職」で仕事継続のケースもすると、本来は、「軽度認知障害」と呼ばれる認知症の前段階で医療機関に相談に来てほしい。専門の医療機関であれば、この段階で診断することが可能です。そのうえで患者が働く会社の担当者と、両立支援について相談するのが理想的な流れです。もう一つ大事なのは、「進行性なのか」、「進行性ではないのか」の鑑別診断です。認知症には、いくつかの種類があり、もっとも患者数が多い「アルツハイマー型認知症」※2は進行性。一方で、2番目に多い「血管性認知症」は基本的に進行しません。血管性認知症は、脳梗塞などの脳血管障害が原因であるため、新たな脳梗塞や脳出血が起きないかぎり、理論的には進行しないのです。一般の方々は、認知症はすべて進行すると思いがちですが、「進行する」、「進行しない」の区別はとても重要です。數井 手です。記憶を定着させたり、新しいことを覚えるのが困難なので、簡単な仕事でも、経験したことのない仕事は、必ずしもやりやすいとはいえません。また、変化が多い仕事や、人に指示を出すような仕事もむずかしいでしょう。「管理職」業務などは、トラブルなどが発生した際に、状況の把握と同時にその対策を考え、部下に指示を出さなければならず、認知症患者には認知症患者は、「学ぶ」ことがとても苦症※4と診断されたケースです。管理職業務は適していない業務といえます。は保たれる認知症も多いので、「荷物を運ぶ」などの作業は問題ありません。「青のテープを貼った荷物を、青い印の場所へ運ぶ」など、認知症の人にとってわかりやすい仕組みを導入すると、より効果的でしょう。數井 製薬会社に研究職として勤務し、研究部門の管理業務を行っていた人が、前頭側頭型認知むずかしくなりましたが、かつて経験していた翻訳ができたので、別の社員が業務に必要な英語論文を選んで渡し、翻訳作業だけを行ってもらうという形で仕事を継続しました。仕事とは直接関係ありませんが、認知症の患者のなかには、将棋が得意な人もいます。一方で、認知機能が低下しても、身体機能国の手引き※3でも紹介していますが、―認知症患者に適さない仕事、認知症でも続けていける領域などについて教えてください。続ける事例もあるようですね。―若年性認知症でも、専門職として仕事を3※2  日本医療研究開発機構認知症研究開発事業「若年性認知症の有病率・生活実態把握と多元的データ共有システムの開発」によると、若年性認知症基礎疾患内訳割合は、「アルツハイマー型認知症」52.6%、「血管性認知症」17.1%※3  『令和3年度厚生労働省老人保健健康増進等事業 若年性認知症における治療と仕事の両立に関する手引き』https://www.mizuho-rt.co.jp/case/research/pdf/r03mhlw_kaigo2021_01.pdf※4  前頭側頭型認知症……脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞の変化、萎縮により症状が出現するエルダー

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