エルダー2023年6月号
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安全配慮義務違反はリスクが高いども含まれるとされています。必要な措置は各々の企業などが独自で考え対応すべきとありますが、一般的な措置として、次のようなものがあげられます。①労働時間管理…時間外労働・休日労働の抑制、特に過労死ラインとよばれる80時間超(2〜6カ月平均)〜100時間超(1カ月)の時間外・休日労働の撲滅、勤務間インターバル制度(勤務終了後に一定時間〈8〜の導入、客観的な労働時間の把握・記録、管理監督者などへの教育②健康管理…定期的な健康診断の実施と受診率の向上、ストレスチェックやカウンセリングなどによるメンタルヘルス不調の防止、産業医などによる健康指導の充実③職場環境の管理…職場内いじめ・嫌がらせ・ハラスメント対策の強化、安全衛生管理体制の構築、安全・衛生設備の導入や安全衛生教育の実施による事故・疾病の撲滅、新型コロナウイルスなど感染症対策の実施また、60歳以上の高年齢労働者に対する安全配慮の取組みについては、「令和3年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」の高年齢労働者に対する労働災害防止対策の状況が参考になります。図表(一部抜粋)を参照してください。ため、措置をとらないこと自体について企業などがペナルティを科されることはありません。しかし、安全配慮を怠ることで、最悪のケースでは労働災害(仕事や通勤を理由として傷病や死亡すること)につながり、労働者から安全配慮義務違反として訴えられ、損害賠償を請求されることがあります。の法令に抵触することになれば、当該法令に基づく罰則の適用や行政機関からの是正勧告を受けることになります。さらには、これらにより企業名が世間に周知され、企業イメージのダウンにつながるリスクもあります。実施すべき措置が法令上で具体的に定められていないため、取組みに対する企業などの温度差が発生しがちな部分ではありますが、怠ったときのリスクが容易に想定できるため、他社の事例などを参考にしながら、しっかりと対応するのが望ましいでしょう。労働契約法第5条には特別な罰則規定がないまた、安全配慮を怠ることで労働基準法など* * * 次回は、「2025年問題」について解説します。49エルダー* 78.081.420.220.7労働災害防止対策の取組内容(複数回答) 4.03.84.74.6 9.810.91.91.512時間程度〉の休憩時間を設ける努力義務)16.216.3医師等による面接指導等の健康管理を重点的に行っている体調異変に備えて、できるだけ単独作業にならないようにしている60歳以上の高年齢労働者が従事区分令和3年令和2年区分令和3年令和2年区分令和3年令和2年出典:厚生労働省「令和3年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」(令和4年7月5日)している事業所計1)2) [75.6][74.6]100.0100.06.47.416.519.4労働災害防止対策の取組内容(複数回答)16.218.327.732.9高年齢労働者に対する労働災害防止対策に取り組んでいる定期的に体力測定を実施し、本人自身の転倒、墜落・転落等の労働災害リスクを判定し、加齢に伴う身体的変化を本人に認識させている健康診断実施後に基礎疾患に関する相談・指導を行っている時間外労働の制限、所定労働時間の短縮等深夜業の回数の減少又は昼間勤務への変更手すり、滑り止め、照明、標識等の設置、段差の解消等を実施高年齢労働者の身体機能の低下の防止のための活動を実施しているその他労働災害防止対策の取組内容(複数回答)作業スピード、作業姿勢、作業方法等の変更18.316.936.138.76.26.241.445.719.916.8作業前に体調不良等の異常がないかを確認加齢に伴い身体機能・精神機能の変化と災害リスク、機能低下の予防の必要性について教育を行っている本人の身体機能、体力等に応じ、従事する業務、就業場所等を変更注: 1) [ ]は、全事業所のうち、60歳以上の高年齢労働者が従事している事業所の割合である。 高年齢労働者に対する労働災害防止対策に取り組んでいない   2)「60歳以上の高年齢労働者が従事している事業所計」には、「高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組の有無不明」を含む。(単位:%)健康診断の結果を踏まえて就業上の措置を行っている30.634.8高所等の危険場所での作業や他の労働者に危険を及ぼすおそれのある作業(機械の運転業務等)に従事させないようにしている図表 60歳以上の高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組の有無及び取組内容別事業所割合■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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