〝あの作品〟映画『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年)心に残るこのコーナーでは、映画やドラマ、小説や演劇、音楽などに登場する高齢者に焦点を当て、高齢者雇用にかかわる方々がリレー方式で、「心に残るあの作品の高齢者」を綴りますハグフォーオール一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事金■沢■春■康■ ■■■■映画『ニュー・シネマ・パラダイス』に登場する老人アルフレードは、映写技師。彼は10歳から仕事に就き、小学校も卒業していません。読み書き算数は苦手ですが、自分が上映した映画のストーリーや登場人物のセリフから学び、確固たる人生観を持っています。少年トトは映写技師の仕事に憧れ、アルフレードへの師事を求めますが、彼は強く反対します。「夏は灼熱、冬は極寒の環境」、「クリスマスも働き、独りぼっちの孤独な仕事だ」トトはたずね返します。「じゃあ、この仕事が嫌いなの?」「いやあ、お客が楽しんでいると自分も楽しい。みんなが笑うと、自分が笑わせている気がする。人々の悩みや苦労を忘れさせる。それが大好きだ」アルフレードとトトは、年齢差を越えて対等につき合い、トトは立派な青年映写技師に育ちます。しかしあるとき、アルフレードはトトに村から出るようすすめます。「決して帰ってくるな。私たちを忘れろ。ノスタルジーを捨てろ」アルフレードには、映写技師という仕事や、村に留まることの人生の行き詰まりがわかっていました。小さな駅からの出立が今生の別れとなります。アルフレードはその後、二度とトトに会うことなく、天に召されます――。アルフレードとトトの関係が素敵なのは、家族でも親戚でもない大人と子どもが、上下関係ではなく、互いの個性や強みを尊重し、支えあう間柄であったことです。社会のなかでの大人と子どもの関係が希薄になった現代では、すっかり忘れ去られた光景といってもよいでしょう。少子高齢化時代は、現役世代が騎馬戦型で高齢者を支える時代ですが、視点を変えると、子ども一人を支える大人の数が、社会全体で圧倒的に増えることになります。現役世代が年金や社会保険で高齢者を支えるのであれば、高齢者は未来をつくる子どもたちを支える側にまわる、という発想も大いにあると思います。私事ですが、NPO法人HU G動で、児童養護施設の子どもたちと一緒に学び、遊び、時間をともにしています。5年前に初めて出会った小学校3年生のS君が間もなく高校進学を迎えます。アルフレードのように温かく、そしてときには厳しく、彼の人生を見守り続けたいと思っています。 for ALL※の活ジュゼッペ・トルナトーレ監督.ニュー・シネマ・パラダイス.フィリップ・ノワレ,サルヴァトーレ・カシオ出演.ヘラルド・エース.1989.55※ https://hugforall.org/エルダー第1回新連載のの高高齢齢者者
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