エルダー2023年6月号
58/68

個人と組織不適合のダイナミクス選択型人事制度の設計と社内規程荻■■原■■勝■■■ 著/適合と不適合が牽引する外部環境適応新卒一括採用や終身雇用を特徴としてきた日本企業の伝統的な人的資源管理では、同質な人々をマネジメントするスタイルが主流であり、個人と組織が適合していることがよしとされてきた。しかし、勤務する会社に対する違和感や不満、葛藤は、濃淡はあれどだれもが抱くものだろう。グローバル化や少子高齢化、技術革新といった外部環境の変化が、組織にも多様性と不確実性をもたらすことになった現在。むしろ違いを活かし、市場や技術の変化に対応していくことが求められるようになってきている。本書は、①採用や教育を経て組織に適合していたはずの個人は、どのように不適合を自覚するのか、②不適合になると個人はどのような適応行動を取るのか、③その行動は組織にどのようなダイナミクスをもたらすのか、という動きをインタビューなどを通じて探求していく。個人と組織の志向性が異なるとき、何が起きるのか。不適合があるからこそ、生まれてくる力があるのではないか。本書は、本誌編集アドバイザーを務める山﨑京子氏がその可能性に着目。学術書ではあるが、不適合の人材のマネジメントに思案する管理職などにも向けて書かれたもので、多くの示唆を与えてくれる。テレワークの普及や週休3日制が注目されるなど、働き方の多様化がさらに進んでいる昨今、画一的な人事制度を見直し、社員が選択できる人事制度を模索する動きが高まっている。本書は、選択型の人事制度を紹介し、規程例などを具体的に解説している。本編は、「勤務時間・休日制度」、「育児・介護の支援」など、人事制度の内容に応じて9章で構成。人事管理を正確かつ効率的に行うためには、会社への届出書、申請書などの様式の整備が必要であることから、社内ですぐに使える様式を多数掲載しているなど実務的なことも本書の特徴である。第8章では、「高齢者の継続雇用と退職」をテーマに、定年退職者再雇用制度をはじめ、高齢者が希望すれば年齢に関係なくいつまでも働くことができる「再雇用者のフリー勤務制度」、再雇用後の高齢者の「勤務時間選択制度」、役職定年制の定めによって役職を離脱した者に対していくつかの進路を用意し、各人に選択させるという「役職離脱者進路選択制度」などを取り上げ、制度設計やモデル規程を提示している。人事制度の見直しや新しい制度を検討している企業の経営者や人事担当者が、気軽に手に取ることができ、参考になる一冊である。産労総合研究所 出版部 山﨑京子 著/白桃書房/3400円経営書院/3080円2023.656※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します「組織不適合」の切り口で日本の組織マネジメントに示唆する一冊人事担当者にとって参考になる規程例などを具体的に解説

元のページ  ../index.html#58

このブックを見る