エルダー2023年6月号
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もう一度、学ぶ技術日本でいちばん大切にしたい会社8f 新しいことを学び始めたり、学び直しをしたりする大人が増えている。仕事のため、資格試験のため、教養を身につけるため、人生を輝かせるためなど、その目的は百人百様だろう。大人になってからの学びには、「コツがいる」そうだ。「三日坊主」になるのは、そのコツを知らないだけで、「やる気も根気も性格も関係ない」と著者はいう。本書は、著者が専門とする「行動科学マネジメント」の手法を使い、大人の学びを成功させるコツを教えてくれる。行動科学とは、「いつ、誰が、誰に対して、どこでやっても」同じような効果が出る、高い再現性が認められる科学的手法で、国内では1200社超の企業で導入しているとのこと。個人の勉強も、重要なのは「どの行動を取ればよいのか」であって、望ましい行動を取れば結果につながり、資格試験やリスキリングなど、あらゆる挑戦に共通して使える手法であるという。その手法を、四つのステップと九つの事例でわかりやすく説明していく。最後の章では、生涯学び続けるための15の心得を提示。「多様な価値観を認める。それも『勉強』(新しい生き方、働き方を学ぶ場)」など、読んでいるとさっそく学びたくなる心得だ。将来予測が困難といわれる社会情勢のもと、企業経営のこれからについて見直しを図るなど、思いをめぐらしている経営者は多いだろう。本書は、元法政大学大学院政策創造研究科教授で、「人を大切にする経営学会」会長の坂本光司氏が、「人を幸せにする経営」を大切にしている企業を全国から選び、経営者や社員をていねいに取材して紹介するシリーズの最新刊。本書に登場する「人を幸せにする経営」とは、①従業員とその家族、②外注先・仕入先、③顧客、④地域社会、⑤株主の5者を大切にしている会社だ。坂本氏は例えば、生産性向上についていまの時代に求められているのは、従来の「経済効率を求めるような生産性向上」、「顕在化した経営資源をターゲットにした生産性向上」ではなく、「人を幸せにする・人が幸せを実感する生産性」、「人の潜在能力を高め、発揮するための生産性」であると説く。本書で取り上げている5社の取組みに、その答えがあるという。掲載企業の松川電氣株式会社(静岡県浜松市)では、社員と家族の「経済の健康」を促進するため、実質定年がなく、65歳を過ぎても60歳時の給与を維持しているなど、高齢者雇用についても多くのヒントが得られる内容だ。青春時代の「思春期」に対し、人生の季節として秋を感じ始めることから「思秋期」と呼ばれる40〜50代。自分の存在意義に不安を覚えたり、体力や気力の低下を実感したり、精神状態が不安定になったりすることもある。本書は、「人にはそんな人生の危機を、なんとかやり過ごし、人生後半戦を有意義に過ごすことができる不思議な力がある」として、「SOC(Sense o力)に着目。SOCは、危機を危機と認識し、悩むことでスイッチが押される機能であり、まず、きちんと悩むことが大事だという。そして、900人超のインタビューで語られた40歳以上のビジネスパーソンの「誰にも言えない本音」を紹介し、「私は会社の〝お荷物〟ですか?」、「転職はするも地獄、しないも地獄」、「『友だち』と呼べる人がいません」などの複雑な心境に対し、有効と思われる対処法を解説する。SOCを高めることで、人はいくつになっても進化することができるそうだ。50歳からその実現に向けて欠かせないのは、内的な力の強化で、「半径3メートル世界を充実させる」、「愛をケチらない」ことも大切とのこと。ミドル世代の視界を開いてくれる好著といえるだろう。Coherence)」(ストレス対処57日本経済新聞出版/コーポレーション/石田 淳■■■ 著/日経BP880円坂本光司 著/あさ出版/1540円河合 薫 著/エムディエヌ1100円エルダー50歳の壁誰にも言えない本音「行動」に焦点をあてた科学的なマネジメント手法を使って、「学び続けるコツ」を伝授ベストセラーシリーズ第8弾!「人を幸せにする経営」を実践する5社を紹介危機を危機と認識し悩むことが大事。それらに対処するヒントを伝授

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