使命感を持って若い人材の育成に臨むgakucomhttps://www.fujise株式会社富士製額TEL:03(3892)8682(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)i.いらり吉田さんによれば、東京額縁は、もともと国産の材木を使うことが前提で、木目を隠す塗りでは必ず漆を使い※、本金箔や本銀箔など質の高い箔を使って仕上げるものだった。しかし、それではコストがかかりすぎるため、現在は輸入材も使い、ある程度合理的に仕事ができるような工夫をしている。「伝統技法ばかりにこだわってもよいものはできません。私は、時代にかなった技法が、後々伝統になっていくと考えています」手づくりの額縁の需要が減少傾向にあるなかで、吉田さんは額縁製作の技術を活かした新たな価値の創出にも取り組んでいる。取材に訪れた日には、ベッドのヘッドボードを製作していた。「先代の時代、当社には幸いなことによい職人が集まってくれま栗く原は大だ地ちさんは同社で塗りの技術した。それには父の人徳もあったと思います。ただ、年を経るごとにみなさん引退されていきますので、新しい人材を育てることには使命を感じています」吉田さんは、伝統工芸の後継者育成を支援する荒川区の「匠育成事業」を活用し、若い世代の職人育成に取り組んでいる。その一人、を修得し、今では立体物専用の額縁や名刺入れといった新製品を開発するなど、同社を支える職人として活躍している。「絵画を販売するお客様から﹃額を変えたら、それまで見向きもされなかった絵が売れ出した﹄と聞いたことがあります。理由を聞くと﹃額のつくりがいいから﹄だと。※ 漆の代用としてカシューも用いられるこのように作品の価値を高めることのできる額縁を、これからもつくり続けていきたいと思います」63東京都荒川区にある株式会社富士製額。表には多数の木材が立て掛けられている木工の最終工程で、額縁の枠を圧着させているところ。丸1日置いて、塗りの工程に進む全国額縁組合連合会のフレーマー額装コンクールへの出品作品。額縁製作は彫金作家に依頼新製品として試作中の手鏡。奥の三つはアンティーク調に仕上げたもの。手前は額に下地塗りした段階のもの額縁に錫箔を貼っているのは、塗り(仕上げ)を担当する職人の栗原大地さん(右)。吉田さんが期待を寄せる若手の一人彫金作家の作品に額装したもの。箔を貼ったうえでこすり取る古美仕上げが施されているエルダー vol.328
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