エルダー2023年7月号
10/68

う8齢期になっても能力や経験を活かして活躍できる環境の整備がいっそう求められていることなどがその背景にあります。冒頭のマンガのなかで賀が東とさんが勤める会社の雇用制度が「60歳定年制」、「希望者全員の65歳までの再雇用制度」、「基準該当者の70歳までの再雇用制度」、そして「運用による70歳を超えての再雇用制度」としているのは、こうした経営環境の変化のもと、一連の高齢法改正に対応したことによるものです。この春に人事部に着任した賀東さんのように、新任の人事担当者のみなさんは現在の高齢者雇用を理解するのがたいへんかと思います。そこで、総論では高齢者雇用に影響を与える現行の高齢法の概要をふり返るとともに、2020年に改正された高齢者雇用における現状を政府統計により確認し、70歳就業時代に向けた課題を述べていきたいと思います。22改正高年齢者雇用安定法の概要020年に改正された高齢法(以下、「新高齢法」)のポイントは、それまでの高齢法(以下、「旧高齢法」)の規定(「高年齢者雇用確保措置」)に加え、事業主(以下、「企業」)が高齢者の多様な特性や就労ニーズをふまえ、70歳までの高齢者の就業機会を確保(「高年齢者就業確保措置」)できるよう、多様な選択肢を制度として設ける努力義務が企業に課せられている点です(図表1)。1現~70歳就業時代の令和期在、65歳まで働くことが一般的となりました。これは政府が平成期に進めた高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)の改正によって、希望すれば少なくとも65歳まで働くことができる環境――実質65歳定年制の雇用制度が整備されたことによるものです。ただし単なる65歳定年制ではなく、「実質」65歳定年制なのは「60歳未満の定年禁止」(高齢法第8条)に加えて、2004(平成16)年の高齢法改正で設けられた65歳までの高年齢者雇用確保措置によって、60歳定年と65歳までの継続雇用(その多くは勤務延長ではなく再雇用)を組み合わせた雇用制度が多くの企業で整備されたことによるものです。令和期に入ると、2020(令和2)年に高齢法が改正(2021年4月施行)され、70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務が企業に課せられ、高齢者雇用は70歳就業時代に向かうことになりました。労働力人口の減少と少子高齢化社会のなか、経済の活力を維持するには、働き手を増やすことがわが国の重要な政策課題の一つになっていること、個々の労働者の特性やニーズが多様化しているなか、経済上の理由から長く働きたい高齢労働者も増えており、高はじめに図表1 新高齢法と旧高齢法の比較高年齢者就業確保措置(70歳までの就業確保措置)※筆者作成高年齢者雇用確保措置(65歳までの雇用確保措置)高年齢者雇用確保措置(65歳までの雇用確保措置)旧高齢法新高齢法義務努力義務

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る