エルダー2023年7月号
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時代に向けた高齢者雇用の対応が企業に求められています。4平成期を通して形成された65歳までの雇用環境によって、現在、65歳まで働くことが日常の光景となっています。さらに、先に紹介したように60歳代後半層の2人に1人が働いている状況にあり、70歳までの就業環境の整備が企業にとって喫緊の課題となっています。最後に高齢者雇用の今後のおもな課題を取り上げると、次の2点です。一つは、定年前の正社員と一貫した人事管理のもとでの高齢者雇用を整備することです。先に紹介した平成期の高齢者雇用をふり返ると、平成期前半は、企業における高齢者雇用の基本方針は福祉的雇用がとられ、そのもとでの高齢社員の人事管理施策(処遇施策)は、定年前の正社員(以下、「現役社員」)のそれと分離して形成されました。すなわち、高齢社員全員の同一賃金あるいは一定率の減額、昇給が行われない、人事評価をしないなどです(解説1であらためて詳しく紹介します)。60歳以降も働き続ける社員が増加するにともない、高齢社員のモチベーションが低下するなどの問題が大きくなりました。この問題を是正するために、平成期後半では高齢者雇用の基本方針が見直されました。福祉的雇用から脱却して、高齢社員の活用を経営成果に貢献する戦力、つまり高齢社員の戦力化が各企業において進められました。昇給の実施、賞与の支給、人事評価の実施などです。さらに、こうした人事管理施策を一部の先進企業は現役社員の人事管理に統合して進めていますが、依然として多くの企業は人事管理施策を現役社員とは分離したままの状態で進めている状況にあり、人事管理の公平性の問題が残ります。統合した人事管理のもとで高齢者雇用の取組みを進めることが今後の課題としてあげられます。二つめは高齢社員の学び直し、リスキリングです。令和期における高齢者雇用の基本方針は引き続き戦略的活用がとられていくことになりますが、今後は戦略的活用の「進化」が求められます。平成期では65歳までの雇用確保をおもに目ざした国の高齢者雇用政策のもと、企業がとった戦略的活用は「いまある能力をいま活用する」方針でした。60歳定年後の就労期間(その多くが再雇用として)が5年間であったため、業務ニーズにあわせて機動的に活用している現役社員と同じように職域を拡げて活用して経営成果に貢献してもらうよりも、「いまある能力をいま活用する」方針のほうが企業、高齢社員の両者にとって合理的だったからです。によって60歳定年後の就労期間が10年になると、例えば、デジタル化をはじめとする技術革新の進展など経営環境は変化するので、戦力化している高齢社員の能力が陳腐化してしまい、現行の戦略的活用(「いまある能力をいま活用する」ことにより経営成果に貢献する)が機能不全に陥ってしまう可能性が高まります。そうなると、高齢社員を現役社員と同じように「業務ニーズにあわせて機動的に活用する」戦略的活用に進化させることが必要になります。そのためにも、業務スキルを向上させたり、新たなスキルを取得させたり、あるいは職域を拡げるためスキルを取得させたりするなど、現役社員と同じように高齢社員にも学び直し、リスキリングが求められます。しかしながら、2021年の改正高齢法施行おわりに~統合型人事管理のもとでの高齢者雇用と高齢社員の能力向上の推進11

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