1マ問題と賃金・評価制度ンガのなかの賀東さんが勤める会社のように「定年後は同じ会社で再雇用として引き続き働く」ことが、60歳定年の会社に勤めている多くの労働者の定年後のキャリア像ではないでしょうか。なぜならば、労働者にとって新たな会社で働くよりも、それまで蓄積してきたスキルや経験を活かすことができますし(もちろん、別の会社で心機一転、新たな挑戦として働くという選択肢もあります)、会社にとっても人手不足のなかで引き続き戦力として活躍してもらえる見通しが立つからです。しかし、高齢者雇用の問題の一つに「高齢社員のモチベーションの低下問題」が指摘されています。これは一般に定年を迎え、そのまま同じ会社で再雇用に切り替わると、これまでは仕事内容が大きく変わらないのに賃金が下がることが背景にありました。賀東さんが勤める会社は、この問題に悩まされていました。そこで、高齢社員の雇用形態は再雇用のままですが、賃金・評価制度を見直したことによって、この問題を是正し高齢社員の仕事へのモチベーション(取組み意識)が高まり、職場で一緒に働く社員から頼りにされるようになりました。賀東さ高齢社員のモチベーションの低下平成期前半の賃金・評価制度~働きぶりと処遇が連動しない仕組みんが勤める会社のように、高齢社員のモチベーションを維持・向上させるために賃金・評価制度を見直す動きが増えつつあります。総論ではこの背景を解説しました。そこで、解説1では、平成期に取り組んだ企業の対応から賃金・評価制度を考えてみたいと思います。成2)年の高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)改正がはじまりでした。この改正高齢法は、65歳までの継続雇用を推進するため、定年到達者が希望する場合の定年後の再雇用の努力義務を企業に課しました。その後も老齢厚生年金定額部分の支給開始年齢をそれまでの60歳から65歳に段階的に引き上げる1994年の公的年金制度改正に連動して、65歳雇用推進に向けた高齢法の改正が進められました。60歳定年が義務化された1994年の高齢法改正、定年の引上げなどによる高年齢者雇用確保措置の導入が努力義務化された2000年の高齢法改正です。企業は一連の高齢法改正を受けて65歳までの雇用確保に向けた人事管理制度の整備に取り組みました。高齢社員の人事管理の基盤となる活用方針は定年まで担当していた同じ分野の業務を引き続き担当してもらうものの、定年前の正社員(以下、「現役社員」)と同じ経営成果に対する貢献度を高齢社員に求めない福祉的雇用が多くの企業でとられ、この方針に基づいて形成された賃金・評価制度は次の対応(図表1)がとられました。賃金については、一律定額の基本給と定額の賞与が支給され、昇給は行われませんでした。評価制度は整備されなかったり、整備され13特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門図表1 国の高齢者雇用政策と企業の賃金・評価制度の対応国の高齢者雇用政策企業の対応※筆者作成雇用の基本方針高齢社員の活用方針賃金の基本方針評価制度エルダー65歳までの雇用確保の努力義務化65歳までの雇用確保の義務化65歳までの雇用確保の動きは、1990(平前半65歳雇用の推進福祉的雇用【基本給】一律定額【昇給】不支給【賞与】定額未整備/整備(継続雇用者用)平成期後半65歳までの雇用制度整備戦略的活用への転換【基本給】 職位・等級などにリンク【昇給】支給【賞与】人事評価を反映整備(正社員準拠)2
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