平成期後半の賃金・評価制度~働きぶりと処遇が連動する仕組みへ高齢社員のモチベーションの維持・向上を図る賃金・評価制度の整備へ向けてていても現役社員の評価制度とは別に継続雇用者(高齢社員)用の評価制度が整備されたりしていました。その結果、高齢社員の働きぶり(能力・成果)と処遇が連動しない仕組みとなりました。これは改正高齢法において65歳までの雇用確保が努力義務であったこと、さらに継続雇用制度を導入した場合、その対象者を労使協定で限定できたことがかかわっています。その結果、継続雇用された高齢社員の人数は、従業員の労務構成において大きな集団となっている現在に比べて小さかったため、多くの企業は現役社員の人事管理と分けて高齢社員の人事管理、つまり分離型人事管理を整備しました。賀東さんが勤める会社の以前の賃金・評価制度が一律定額の賃金で、評価を行わなかったのはこのような背景があったのです。3平成期後半になると、65歳雇用促進に向けた動きが加速しました。2004年の高齢法改正で雇用確保措置が義務化され、さらに2012年の高齢法改正で労使協定による対象者の限定が廃止されたことにより、希望者全員が65歳まで働くことができる雇用環境が義務化されました。少子高齢化が進展し、厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるなか、こうした一連の高齢法改正を受けて定年後も引き続き働くことを希望する高齢社員が増え、企業における社員の労務構成において大きな集団となりました。そのため、福祉的雇用の活用方針のもとで企業側が悩まされていた高齢社員のモチベーションの低下問題(定年前と同じ仕事を継続して担当しているにもかかわらず、処遇などが大きく変わることに対する不満)が全社的な経営課題となりました。先進企業はこの問題を是正するため、高齢社員が活き活きと活躍できる職場環境の整備を進めました。まず高齢社員の活用方針を、それまでの福祉的雇用から定年後も引き続き長年にわたって蓄積してきたスキルと経験を経営成果に貢献する戦力として位置づける戦力的活用に転換しました。ただし、戦略的活用は引き続き現役社員と同じ活用(業務ニーズにあわせて機動的に活用する)とするのではなく、「いまある能力をいま活用する」方針としました。この方針にあわせて、賃金・評価制度は現役社員の仕組みに近づける対応がとられました。高齢社員の働きぶりを処遇に反映させるよう、賃金制度では基本給を一律定額から定年時の職位・等級などにリンクした水準に、昇給を不支給から支給へ、賞与を定額から正社員と同じように人事評価を反映する決め方へとそれぞれ見直され、正社員と同じ評価制度を高齢社員にも用いるようになりました。賀東さんが勤める会社でも戦略的活用を積極的に推進する企業と同じ対応がとられているため、高齢社員のモチベーションの低下問題は是正され、活き活きと働くようになりました。4高保に加えて65歳以降の就業について他社での雇用確保と就業確保措置が新たに努力義務化されました。その結果、60歳(特に65歳)以降の働き方の選択肢がさらに拡がる一方、賀東さんが勤めている会社のように、60歳の定年後も再雇用などで10年近く働くことができる企業が増えていくことが期待されます。に高齢社員だけの問題ではなく、一緒に職場で働いている正社員にもマイナスの影響を与えてしまうことになります。70歳就業時代の令和期において社員の労務構成において大きな集団となっている高齢社員の賃金・評価制度をどのように考えればよいのでしょうか。前述したように高齢社員の就労形態には多様な選択肢がありますが、現在70歳就業を進め齢法によって、従来の自社内での雇用確高齢社員のモチベーションの低下問題は単14
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