エルダー2023年7月号
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2総合工事業B社短時間勤務制度の導入事例多様な勤務制度の整備は高齢社員出典:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)(2023)『70歳雇用推進事例集2023』をもとに筆者作成「人件費を抑えるため」(11・4%)などよりも、「高年齢者の就労ニーズ(日数・時間)の多様化のため」(63・5%)、「高年齢者の体力に配慮するため」(58・3%)といった高齢社員の要望・実情に配慮していることがうかがえます。仮に、企業が現在雇用しているすべての従業員を65歳を超えても雇用する場合の勤務形態は「フルタイム」(55・9%)がもっとも多い回答であるものの、「短時間」も4割台の水準で多く、企業は就労ニーズにあわせて多様な勤務形態によって雇用することを考えているようです※4(図表3)。4冒だけではなく、すべての社員を対象に頭で述べましたが、戦力的活用が進むなか、高齢社員の勤務制度は現役社員と同じフルタイム勤務が多くなっていますが、その一方で加齢にともなう身体機能の変化(低下)、家族の介護や本人の病気治療などの健康問題が現役社員よりも顕著になるため、すべての高齢社員にフルタイム勤務を適用すると退職する者が出てきてしまいます。これは働き続けたい高齢社員にとっても、会社にとってもよいことではありません。マンガのなかの賀東さんが勤務する会社のように短日数勤務制度、短時間勤務制度などのフルタイム勤務以外の勤務制度を設けるなど、高齢社員の就労ニーズにあわせて選択できる多様な勤務制度の整備が求められます。また、こうした多様な勤務制度を求める就労ニーズは高齢社員だけではありません。フルタイム勤務をしている現役社員においても育児や親の介護、本人の病気治療などの健康問題を抱えている者もいます。賀東さんが勤務する会社県内に3カ所の事業所を持つ総合工事業B社は、2019(令和元)年に実施した65歳定年と希望者全員の70歳までの継続雇用への制度の見直しにあわせて、継続雇用者を対象とした短時間勤務制度を導入しました。同社の勤務制度は事業特性の関係からフルタイム勤務だけでしたが、継続雇用者本人の体力低下など加齢にともなう健康状態の変化により、フルタイム勤務を続けのように多様な勤務制度は高齢社員だけに限定せず、すべての社員に広く適用することが求められます。取組みを紹介します。この事例の特徴は、多様な勤務制度を導入することがむずかしい事業特性であるものの、高齢社員の事情にあわせて短時間勤務制度を導入した点です。ることができなくなり、退職する継続雇用者がみられるようになりました。こうした問題を是正するために短時間勤務制度が導入され、本人の希望に応じて1~3時間の勤務時間を短縮する措置が講じられています。実際には継続雇用者は現役社員と同じようにフルタイム勤務を続けていますが、「今後、もし事情が生じても働き続けられる、精神的にも不安がなくなる」などの意見が寄せられています。こうした多様な勤務制度の事例としてB社の19特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門エルダー※4 業種、従業員規模の企業属性の違いによる傾向は図表2と同じ特徴がみられる

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