エルダー2023年7月号
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戦後から取り組んできた健康・栄養指導で全国トップクラスの平均・健康寿命2020(令和2)年の統計によると、内山 長野県の男性の平均寿命は82・68歳で全国2位、女性は88・23歳で全国4位※1です。健康寿命では男性が81・1歳で全国2位、女性が85・2歳で全国1位※2となっています。この要因についてよく聞かれるのですが、統計分析では、①高い就業意欲や積極的な社会活動への参加による生きがいを持った暮らし、②健康に対する意識の高さと健康づくり活動の成果、③高い公衆衛生水準および周産期医療※3の充実――の三つが指摘されています。特に②の健康づくりに関しては、行政と地域の健康ボランティアが連携し、戦後間もないころからの長い活動の歴史があるのです。長野県では、「保健補導員」という住民の方が、保健師や医師と一緒に地域で健康指導若■月■俊■一■という医師が「病院は病気になった人 ■■■■や食事の栄養指導を行う活動を、昭和20年代から行っています。この保健補導員制度は長野県が最初といわれています。また、地域の「食生活改善推進員」が行政と一緒に食生活改善運動を展開し、これらの取組みの積重ねが、長野県の健康長寿を実現したといわれています。なかでも、特筆すべき取組みが、佐■久■総合病院(佐久市)による農村医療への取組みです。を待つ場所ではない。医療者自ら地域に出て行くべきだ」と提唱し、昭和30年代から出張診療や健康・食事指導が始まり、その際に医師や保健師、看護師が役者になって、演劇を通じて看護や食事のあり方を教える活動を行いました。こうした長年の伝統が地域住民に浸透し、健康に対する意識を引き上げたのです。内山 いろいろな要因が考えられますが、元々生まれ故郷が農業や林業を行っていたという背景があります。都市部の会社員と比べ、長野県の場合は定年退職後、家業の農業や林業を引き継いで仕事をする人が多いからだと思います。退職後は、子どものころからときどき手伝っていた家業を行うのが普通の光景なのです。内山 978(昭和53)年に開設された「長野県老人大学」にさかのぼります。1989(平成元)年に長野県長寿社会開発センターが設立され、そこに老人大学の運営が移管、2008年に名称が「シニア大学」に変わりました。シニア大学は、シニア世代の多様な生き方、価値観を大切にしながら自ら地域的課題に気づき、学習を通して社会参加へのきっかけをつかみ、地域とかかわる人材を育むことを目ざしています。2013年には長野県長寿社会開発センターの改革が行われ、シニア大学が従来から掲げてきた目的である「生きがいづくり」、「健康づくり」、「仲間づくり」に、新たに「社会参加の推進」が加わりました。※1 厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」※2 公益社団法人国民健康保険中央会「平均自立期間・平均余命都道府県一覧(令和2年統計情報分)」※3 周産期医療……妊娠22週から出生後7日未満までの期間をさす「周産期」を含む前後の期間における医療体制のこと変遷を説明すると、「シニア大学」は1―長野県は平均寿命、健康寿命ともに全国トップクラスにあります。健康長寿を長年維持してきた要因とは何でしょうか。―就業意欲の面でいうと、長野県は高齢者の有業率も全国1位となっています。県シニア大学(以下、「シニア大学」)の運営などさまざまな活動を展開されていますね。―長野県長寿社会開発センターでは、長野2023.72公益財団法人長野県長寿社会開発センター 理事長内山二郎さん

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