ます。それでも賃金カーブが寝ている中小企業は別として、ある年齢より後はオーバー・コスト(後述)になるため、企業の多くは60歳定年制を堅持しつつ、定年後は有期雇用として賃金待遇を70〜80%程度に切り下げる定年後再雇用制度によって高齢者を雇用してきました。その場合、定年前と同じ仕事、同じ働き方をさせつつ慣習的に定年前賃金の60%に切り下げたり、仕事の内容にかかわらず一律25万円と決めたり、仕事や貢献度の違いが反映されない固定的な賃金待遇を実施する企業も少なくありません。定年後の収入減は、在職老齢年金や雇用保険の高年齢者雇用継続給付などで補われてきましたが、団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年4月には、これらの公的給付が廃止・縮小されます。人手不足のもとで、高齢者の一層の人材活用を図りたい企業としては、公的給付の低下による高齢者の収入減を無視できません。また2020(令和2)年4月からパートタイム・有期雇用労働法が施行され、定年後の有期雇用を理由に低処遇とすることは、違法な労働条件の相違として、無効とされる可能性があります。いずれにせよ60歳以降の賃金待遇の見直しは避けられません。発生する従来型の年功賃金カーブ(A)と、高齢者を含めて常に人件費と生産性を均衡させようとする仕事基準・短期決済の役割給(B)とを対比したものです。年功賃金とは、簡単にいえば高齢者に貢献以上の賃金を支給することで、若年・中堅層に「自分たちも先輩を見習って仕事をすれば先輩のように昇給できるはず」と期待を持たせ、賃金以上の貢献を長期間引き出す仕組みです。3図表3なはぜ、定高年齢延者長の生は産む性ずをか上し回いるの人件か費がただし左側(A)の図のように、ある限界年齢以降は、中高年層の生産性よりも人件費が高くなる賃金のオーバー・コスト(斜線部分)が急に膨らみ、人件費全体の費用対効果が著しく低下します。その防壁として、一定年齢以上は雇わない強固な一律退職ルールが不可欠になるわけです。このような典型的な60歳定年の会社が無理やり定年延長を行えば、図(A)の斜線部のように定年延長分だけ人件費のオーバー・コストが大幅に増加することが明らかです。定年図表2 典型的な年功賃金と高齢者待遇の実情図表3 年功賃金カーブの現状と役割・貢献度に応じた賃金カーブへの修正©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載高年齢雇用継続給付定年延長で増えるオーバー・コスト●現状…高齢者の生産性<人件費(A)人基準・長期決済の年功給定年・最後は貢献以上の賃金を支給する仕組みなので、一定年齢後は高賃金を強制的に修正・終了しないと制度がもたない・機械的な昇給抑制はモラールダウンを招く・定年制を維持し、定年後の処遇の切り下げが必要(質の高い仕事はさせられない)©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載◎あるべき姿…高齢者の生産性≧人件費(B)仕事基準・短期決済の役割給・常に貢献と賃金のバランスをとる仕組みにしておけば、定年後の賃金を特別扱いする必要はない・仕事の質を下げる必要はない・働けるかぎり貢献でき、定年制は意味を失う(エイジ・フリー)(金額)年功賃金=高年齢者に貢献以上の賃金を支給することで、若年・中堅層から賃金以上の貢献を長期間引き出す仕組み・「先輩のように昇給できる」という期待感正社員の基本給カーブ(標準Bモデル)・ある限界年齢より後はオーバー・コスト・賃金カーブが寝ている中小企業以外は、 定年制による継続雇用賃金の大幅な引き下げが必要 →定年後再雇用制度を導入定年後は正社員の賃金待遇と切り離す継続雇用賃金は定年到達時賃金の70〜80%程度60歳定年再雇用定年再雇用正社員≠継続雇用 (1社2制度)無年金期間の減収仕事や貢献度の違いが配慮されない固定支給同一労働同一賃金に抵触する可能性65歳(年齢)すでにあるオーバー・コスト貢献賃金貢献賃金2023.744定年
元のページ ../index.html#46