エルダー2023年7月号
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正社員に役割給を導入、定年後は加えて、定年を延長し、力のある高齢者が重要なポストを占有し続ければ、若手社員は昇進・昇格が遅れ、先輩の賃金にますます追いつきにくくなります。賃金の抑制や人事の停滞は若年・中堅層の不満・離職に直結する恐れが大です。めをかけ、高齢者の代わりに伸びしろのある若年・中堅層を育成・登用し、組織の新陳代謝をうながす雇用・人事秩序そのものといってよく、特に賃金カーブが立っている大企業が定年を廃止したり、定年延長にふみ切ることは容易ではありません。しかし、定年後再雇用の賃金を機械的に下げるやり方では、高齢者が活き活きと働き続けられる環境とは程遠いものがあります。パートタイム・有期雇用労働法に示された均衡待遇・均等待遇の原則に照らしても、賃金を下げる以上雇う側も高齢者の仕事の質を落とさざるを得ません。そのため、定年を境に仕事の意欲が明らかに低下し、なかには不満を抱えた高齢者を抱え込む結果になってしまいます。4年齢・ジ性ョ別ブを型問のわ継ず人続材雇が用活賃躍金でをき適るシ用ンプルな雇用・人事を実現するシナリオのなかで最大の決め手は、正社員に役割給を導入して、常に働く人の貢献と会社が払う賃金のバランスをとり、緩やかな仕事基準の賃金待遇に移行することです。これにより、従来の属人的な年功賃金カーブを、図表3右側(B)の貢献度を表す曲線(点線)にフィットする賃金カーブへと修正する道が開けます。このような仕組みであれば、人は働けるかぎり貢献し、働きに応じた賃金待遇を受けることができ、定年制もやがては意味を失います。欧米の職務給などはこうした実態に近いといわれています。とで正社員に役割給を導入し、メンバーシップ型の柔軟な職務・配置を維持しつつ、組織における役割と実際の貢献度の評価に基づくメリハリの利いた賃金待遇を実施するイメージを示しました。左の扇状の山なりに昇給する5本の太い実線は、定年までの正社員の役割給の展開を示し、3本目の実線の新標準Bモデルを中心に、グレーの実線のように役割と貢献度の違いに応じて役割給が徐々に分岐・分散していく様子を表します。この例では、若手〜中堅層の賃金を意図的に引き上げ、その分、年功的に高くなりすぎている中高年層の賃金カーブを徐々に抑制しています。正社員については、組織における社員個々の成果責任を確認し、目標設定や業績評価、行動評価を通してその貢献度を客観的に評価するノウ図表4は、ひとまず現実的な60歳定年制のもハウが、すでにかなりの企業で運用されています。定年後再雇用者には、正社員の役割給のテーブルを準用し、短期決済型の職務限定の有期雇用にあわせたジョブ型賃金を適用します。1年ごとの労働契約書により、職務内容と働き方に応じた再雇用賃金を確認し、契約更改の都度再雇用賃金を見直していきます。次回は、役割給のモデル事例と賃金換算表方式によるジョブ型の定年後再雇用賃金の設定方法など、より実務的な解説を進めていきます。定年準Bモ準Bモ45エルダー図表4  役割給による正社員の賃金カーブ修正と定年再雇用のイメージ(60歳定年)シニア社員のためのシニア社員のための旧カーブよりも早く昇給し、早く頭打ちになり、総面積(生涯賃金)は変わらない短期決済型賃金(有期雇用契約)ルルデデ標標旧旧役割と貢献度により賃金カーブが分岐同一労働同一賃金に抵触しない設定雇用確保措置雇用確保措置(定年再雇用)(定年再雇用)(金額)©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載最高Sモデル最高Sモデル上位Aモデル上位Aモデル新標準Bモデル新標準Bモデル下位Cモデル下位Cモデル待遇改善待遇改善低位Dモデル低位Dモデル元の再雇用賃金元の再雇用賃金60歳65歳70歳(年齢)正社員と継続雇用に同一の役割給体系を適用就業確保措置就業確保措置「「ジョブ型ジョブ型」」賃金制度賃金制度ののつくり方つくり方60歳定年制は、年功的な人件費の増大に歯止

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