とはいえ、可能なかぎり労使間の認識を明確にしておくために、ガイドラインでは、単に「シフトによる」と記載するだけでは足りないとされています。このような記載はガイドラインが公表される以前は多くみられた記載ですので、注意が必要です。今後は、原則的な始業および終業時刻を記載したうえで、契約締結と同時に定める一定期間分のシフト表などをあわせて労働者に交付することが必要とされています。次に、「休日」については、具体的な曜日などが定まっていない場合は、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明示しなければなりません。週に1日ではなく4週に4日以上の休日とするような変形休日制を採用する場合には就業規則などに定めることも必要になります。以上のほか、紛争予防のために望ましい取組みとして、シフト作成に関するルール(労働者の意見聴取を行う、シフト表の通知期限や方法など)を定めておくことや、シフト変更に関するルール(シフト期間開始後の変更期限や手続など)を定めておくことなどがあげられています。そのほか、労働日や労働時間についても、契約上、具体化することができないとしても、基本的な考え方を労使間で合意しておくといった方法があげられています。シフト表などによる労働日と休日の決定において、重要な点として、シフト決定前とシフト決定後の変更は、その法的性質が大きく異なるということです。シフト決定前は、白紙の状態に指定することで労働日と労働時間が具体化されるという性質であるため、使用者の裁量が大きいといえますが、一度決定した労働日や労働時間は労働契約の内容となっているため、これを自由に変更することができるとはいえません。そこには、一定の制約がなされるべきということになります。3シフト制の労働者について、シフトの削減ではなく、自宅待機命令から出勤命令に変更した事例において、当該変更が違法であるとして争われた事例があります(大阪地裁令和4年6月23日判決)。当該裁判例における使用者は、毎月25日までに、各従業員に対して勤務指定表と題する文書を示して、翌月各日の勤務の有無および種類を通知することが就業規則に定められており、業務上の必要性により指定した勤務日や種類を変更するときは、「勤務変更通知書」を交付して変更する運用が採用していました。使用者は、事業における業務量が減少したことから、実際に勤務する人員数を減少させ、自宅待機させる労働者を設けるようになり、勤務指定表において自宅待機日を指定するようになっていました。当該自宅待機日において、知識向上および業務改善のために配付した資料に自ら記入して次回出勤日に必ず提出することとされていたところ、これを提出しなかった労働者に対して、自宅待機として指定していた労働日を出勤するように変更する内容の勤務変更通知書を交付しました。この勤務変更が、違法なものであるとして、損害賠償請求がなされました。所や勤務内容の変更という要素を含んでいるところ、当該裁判例では、東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日判決)の示した基準を参考にしつつ、①業務上の必要性、②不利益の程度、③従業員間の負担又は相違の有無、程度及び合理性といった考慮要素をもって判断するという規範を示しました。働契約上、自宅待機を命じられる権利を有していたものではないこと、課題提出者にも自宅待機が命じられることがあったことおよび課題の分量や所要時間が乏しいものであったことなどを考慮すると、本件運用が従業員間に一定の業務上の負担の相違を生じさせるものであったとしても、その相違の程度が著しいとはいえず、従業員間の公平性を害するものということはできない」として、課題を提出していなかった自宅待機予定の労働者に出勤を命じたことは、裁量権の範囲を逸脱し、自宅待機から出勤を命じることは、勤務場これらに照らしたところ、「労働者が、労シフト制労働者に対する指示の変更に関する裁判例47エルダー知っておきたい労働法AA&&Q
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