エルダー2023年7月号
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Q2高齢者雇用の今後について現在の日本における高齢者雇用の状況について教えてほしいまたはこれを濫用するものではなく、違法ではないと結論づけました。この裁判例において参考になるのは、自宅待機状態(シフト上の休日)から出社を命じることについて、就業場所の変更をともなうことを考慮して、一度指定したシフトを変更するときの判断基準について、東亜ペイント事件の規範に準じた内容が用いられたという点です。東亜ペイント事件は、配置転換命令の有効性を判断するという事案のリーディングケースですが、業務内容や場所を変更する命令についても応用的に利用されました。特徴的なのは、③従業員間の負担または相違の有無、程度および合理性という要素があげら1高年齢者(55歳以上の者)の雇用に関して、れている点です。シフト制労働者が多数いる状況のなか、だれに対して業務内容や場所を変更するかどうかを決めるためには、このような要素、いい換えれば人選の合理性が問われるということが示されたともいえるでしょう。紹介した裁判例では、自宅待機中に行うよう求められていた課題などに取り組まない社員(自宅待機中に知識向上や業務改善に取り組まない人員)を優先的に出社させることが、人選の合理性があると肯定されています。シフト決定前と決定後における法的な性質の違いと、シフト決定後における変更命令において考慮すべき事項に留意しながら、シフト制労働者を適切に雇用管理していきましょう。高年齢者雇用安定法は、その継続的な雇用または就業機会の確保を目ざして、改正が重ねられています。直近では2021年4月1日から、70歳までの定年の引上げ、定年の廃止、70歳までの継続雇用制度の導入、業務委託契約を締結できる制度の導入および社会貢献事業に従事できる制度の導入のいずれかの方法で70歳までの就業機会を確保することが努力義務として施行されました。なお、法的な義務は、65歳までの定年の引上げ、定年制の廃止、65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置を導入することとされています。として、必ずしも雇用に限定しない方法で高年齢者が事業や社会貢献活動にかかわることが求められるようになっていますが、これまでの高年齢者雇用安定法においても努力義務として定めた後に、法的な義務とする改正が行われてきたこともあり、現状は、就業機会の確保の準備期間ともいうべき状況にあると考えられます。22集計結果が公表されています。企業および大企業ともに99・9%が実施ずみとされており、ほぼすべての事業主が実施しています。また、これらのうち、70・6%が継続雇用制度の導入となっていますが、割合としては減少しており、定年の引上げによりこれにより、70歳までの「就業機会の確保」022年「高年齢者雇用状況等報告」の高年齢者雇用安定法が2021(令和3)年に施行されて、70歳までの就業確保措置などが加わりましたが、これらの導入状況はどうなっているのでしょうか。引き続き、65歳までの継続雇用制度を導入している企業が多い状況ですが、就業確保措置を導入している企業も現れてきています。2022年の就業機会確保措置等の導入状況2023.74865歳までの雇用確保措置については、中小A

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