対応している企業が若干増加しています。近年では60歳であってもまだまだ働けるという方が増えているようにも思われ、定年の引上げはその状況を反映しているようにも思われます。また、継続雇用制度を導入する場合は、定年後には有期雇用契約とすることにともない、賃金を減額するにあたっては、同一労働同一賃金の観点からも業務内容、就業場所の変更の範囲、責任の範囲などについて、相違を設けることを意識せざるを得なくなりますが、現実的には相違を設けることがむずかしい場合もあり、継続雇用よりも定年の引上げの方が企業の実情にあうという場面が増えているのかもしれません。一方で70歳までの就業機会確保措置については、実施ずみの企業は27・9%であり、2021年と比較し2・3%増加していますが、比較すると、まだまだこれからという状況になっています。その多くは、70歳までの継続雇用制度の導入となっており、業務委託契約を締結できる制度の導入および社会貢献事業に従事できる制度(「創業支援等措置」)を導入しているのは創業支援等措置については、社会貢献事業を行っているのはおおむね大企業に多く、そのような制度を準備できる企業がそもそも限定的であると考えられるため、現実的には業務委託契約を締結できる制度の導入が選択肢、0・1%にとどまっています。になると考えられます。一方で、法的な観点からすれば、雇用契約から業務委託契約に切り替える点については、その実践方法が確立しておらず、実施した企業がそのリスクを背負うということになりかねず、現実的な選択肢になっていないようにも思われます。実務的には、雇用ではなく業務委託契約で従事している方について、労働基準法が適用されないように構築することは、容易ではありません。なぜなら、労働者としての性質を有しているか否かについては、1985(昭和60)年に作成された「労働基準法研究会報告」(2021年に公表された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」においてもこの報告が引用されています)や37号告示と呼ばれる「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」などを参照しながら検討するのですが、これらの文書に掲げられた考慮要素については、総合考慮を前提としている一方で、各考慮要素の重みやバランスは専門家の感覚に委ねられている部分もあり、ケースバイケースの判断が必要になることが通常となっているからです。裁判例の蓄積があるといえども、同様の業種であっても、業務委託と認められた会社もあれば、そうではない会社もあります。高年齢者の就業機会を確保しようと検討するにあたって、このような法的に安定しない業務委託契約の導入に踏み切ることはむずかしい側面があります。にすることができれば、業務委託契約を締結できる制度の導入という形で70歳までの就業機会確保が実現していくのではないかと思われます。3定用、12・7%が継続雇用を希望しなかった、わずか0・2%が継続雇用を希望したが継続雇用されなかったという分類となっています。統計からは、高年齢者の継続雇用を行わないことがきわめて少数です。とを検討される企業からの相談などを受けることがありますが、解雇に相当するほどの事情がなければ、継続雇用を拒絶することはできず、31人以上規模の企業における60歳以上の常用労働者数は、2022年6月1日現在約441・7万人に達しており、その人数は年々増加し続けているため、定年後の労働者も活躍してもらえるような環境整備や制度の準備という課題は重要性を増しています。自社にとって、貴重な人材のモチベーションを維持しながら活かし続ける方法を模索していくことが必要な時代となっているように思われます。雇用契約と業務委託契約の区別をより明確年到達した者のうち、87・1%が継続雇高年齢者の継続雇用について、拒絶するこ定年到達者の動向49エルダー65歳までの継続雇用が99・9%であることと知っておきたい労働法AA&&Q
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