エルダー2023年7月号
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谷さん側から「仕事がありますか?」、「これをやりましょう」など、積極的な提案があることが大きいと思います。短期間の目的を達成し、そこで終わりではなく、その後、いかに次の課題を一緒に見つけて一緒にチームとしてやっていくのかが重要です。しかしこれは、とてもむずかしいことでもあると思います。その意味で深谷さんはとてもアグレッシブです。契約したときが73歳、現在82歳なので、ちょっと規格外すぎると驚いています。一方で、つねにアグレッシブにチームへの貢献を提案する深谷さんに対して、会社として必ずしもすべてに応えられていないのかもしれないという点が、課題だと感じてもいます。「深谷さんの持っているポテンシャルをつねに活かしきれているのか?」と自問しながら、次に何に挑戦するのかを、探求し続けたいと思います。もちろん、逆にアドバイスだけ、ノウハウだけを伝えていただいて契約満了という形もあります。実際、別の方で製造業の経験者を紹介していただいたときはそういう形になりました。その方には、当社の新製品の製造委託先を検討する際に、海外にある一部の部品の製造委託先を調査し、その工場を監査するといった業務をお願いしました。このときはその業務が終了するとともに契約も満了となりました。こうして、ある期間で問題を解決したら契約を満了して次の人材を探すといったスタイルでの契約形態もありだと思います。もう一つ、深谷さんの役割として大きいのは、ものづくりの現場を熟知されているので、その経験から生み出される言葉にすごく重みがあるということです。私もメーカー出身ではあるのですが、「ものづくりのすべてを理解しているか?」と問われると手探りのところもありました。創業時はものづくりのバックグラウンドがないメンバーも多かったので、そういったメンバーに投げかける言葉には大きな影響力があり、ものづくりに関する文化醸成にはかなり寄与していただきました。ソフトウェアのエンジニアでも、ものづくりの分野に興味があります。そこでときには深谷さんを講師として、回路設計に関する勉強会を開いたりもしました。そしてもう一つ、長い期間一緒に仕事をさせていただけた背景には、当社のフラットな社風があると思います。そもそも年齢を気にしない雰囲気で提案しやすい、何でもいえる社風だったので、深谷さんも「これをやってみませんか」といい出しやすかったのではないかと思います。くないですし、年齢も考慮して、業務内容は絞っています。基本は回路設計と回路の製造に関するところをやっていただいて、数年前からは実際の試作品の評価をする、あるいは量産品のなかでお客さま先で故障してしまった製品の故障原因を調べるなど、そういったところも実際に手を動かしてやっていただいています。これらはエンジニアの通常の仕事なのですが、そこは本当に同じ目線でやっていただいています。同じ目標を持つ創業メンバーの一人なのだと実感しています。とはいえ「何でも屋さん」的にはお願いしたそういう意味で、深谷さんも私たちと同じ志、つづく長年の経験から生み出される言葉は企業文化の醸成に大きな影響を及ぼす同じ志、同じ目標を持ったメンバーとしてともに歩む51エルダー深谷さんを講師とした回路設計勉強会(写真提供:株式会社Photosynth)スタートアップシニア人材奮闘闘記

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