エルダー2023年7月号
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〝あの作品〟このコーナーでは、映画やド■ ■■■ラマ、小説や演劇、音楽などに登場する高齢者に焦点をあて、高齢者雇用にかかわる方々がリレー方式で、「心に残る〝あの作品〟の高齢者」を綴ります社会保険労務士丸■山■美■幸■ニューヨーク郊外に住む70歳のベン・ウィテカーは、長年連れ添った妻と死別し、隠居生活の時間を持て余していました。そんなある日、スーパーでシニアインターンの求人募集広告を目にします。場所は、かつて自分が勤めあげた電話帳工場で、いまはファッション通販サイトの運営会社『アバウト・ザ・フィット』。応募は履歴書ではなく、自己PR動画投稿。ベンは慣れないデジタル機器で動画を作成し、若い重役の面接もクリア。見事シニアインターンに採用され、アバウト・ザ・フィットの創業者で、40歳年下の女性社長ジュールズ・オースティンの元に配属されます。ところがジュールズは「あなたに任せる仕事がない、必要なときはメールで指示する」とベンにいったきり梨の礫■。数日後の朝、出社前にベンは「行動あるのみ」と意を決したようにつぶやき、行動します。郵便物や宅配荷物をカートで運ぶ女性社員を手伝ったり、同僚のヤングインターンに消費行動分析を教えたり、恋愛問題の相談に応じるなど、彼の経験がなせる行動の数々。それを見かけたジュールズは、「私のインターンは忙しそう」とつぶやくと、会社のナンバー2のキャメロンが「ベンはみんなに親切で人気があるんだ」と教えます。ベンは職場の若い人たちの信頼を得て、会社に溶け込んでいくのでした。ジュールズが気がかりにしていた物置エリアの山を、ベンは朝7時に出社して片づけます。キャメロンが社内放送でベンを呼び、ジュールズは大喜びで自ら感謝の言葉をベンに述べます。いっせいに拍手が沸き起こり、ベンはジュールズと会社中の信頼を得たのでした。この後もベンの言動や活躍から人柄を信頼したジュールズは、夫との問題や株主から要請されたCEO選任などの大問題を相談するほど、ベンに大きな信頼を寄せるようになります。シニアが前向きに仕事をしている特徴を健康社会学者の河■合■薫■氏は、「適応の視点では半径3メートルの環境に溶け込もうとしているか否か、健康社会学の視点では人格的成長を維持・強化できたか否か。人格的成長は自分の可能性を信じる志向、危機や不安に遭遇したときこそ高められるポジティブ思考の一つ。この人格的成長こそが50歳以降の人生の鍵といっても過言ではない」と説いています。ベンのシニアインターンとしての姿勢は、これに合致しているのではないでしょうか。ベンのように多くの信頼を得られるのはとても素敵です。余談ですが、ベンを演じたロバート・デ・ニーロ氏は、79歳で7人目の子どもを授かったことを今年の5月に明かしました。こちらも素敵な話題ですが、ベンの働き方を見習うことはできても、デ・ニーロ氏の生き方を見習うのはむずかしそうです。映画『マイ・インターン』(2015年)心に残る■■■■2023.754『マイ・インターン』デジタル配信中ブルーレイ 2,619円(税込)/DVD 1,572円(税込)発売元: ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント販売元: NBC ユニバーサル・エンターテイメント©2015 Warner Bros. Entertainment Inc. and Ratpac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved.第2回のの高高齢齢者者

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