レーシアでも、法定定年の年齢を引き上げる法改正が行われました。一方、ヨーロッパ諸国の多くでは、定年は、年金の受給と関連づけられて正当かどうかが判断され、運用されています。例えばドイツでは、「労働者が年金を受給できる年齢に達した際、雇用関係が自動的に終了する」ことを定めた労使の合意が合法とされ、現在は公的年金の支給開始年齢である65歳が定年として定着しています。ただ、支給開始年齢は2012年から2029年にかけて67歳に引き上げられることとなっており、それに合わせて今後定年年齢を引き上げていく企業などが増えることが予想されています。またフランスでは、労働者が70歳に達した場合に、使用者は労働者本人の意思に関係なく退職を強制することができますが、70歳未満の労働者については、原則として年金の満額支給開始年齢(現在は67歳)に達した労働者が承諾した場合にのみ、退職を推奨することが認められています。定年を公的年金の支給開始年齢と関連づけて規定したり、運用したりしているヨーロッパの国々としては、そのほかにオランダ、スイス、イタリアなどがあります。定年制のように年齢と就業継続・引退とを結びつけるルールを、年齢差別として排除している国・地域もあります。よく知られているように、アメリカでは定年制度を設けること自体が禁止されています。1967年に制定された「雇用における年齢差別禁止法」は、雇用のすべての面における年齢を理由とする事業主の差別行為を禁止し、1986年には法律の対象となる雇用者の上限年齢に関する規制が撤廃されました。イギリスではかつて法定定年の年齢が65歳と定められていましたが、2011年10月に廃止されています。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった国々も、すべての年齢での定年制度を禁じています。3ヨ定年が持つ「機能」ーロッパ諸国の年金と連動した定年制の運用に比べ、日本をはじめとする国・地域におけるような、法定定年のもとで運用される定年制は、加齢に基づき労働にかかわるさまざまな状況を変えるという機能がより強く表れるととらえることができます。特に日本では2006年以降、年金支給開始年齢までの雇用確保措置が企業に義務づけられ、定年制は勤務してきた企業などからの退出・引退につながる制度というよりも、賃金や役職など働く高齢者の処遇を変える契機としての機能をより強く発揮するもの0.46.40.636.546.1定年前(60歳頃)と同じ仕事であるが、責任の重さが軽くなる定年前(60歳頃)と同じ仕事であるが、責任の重さが重くなる定年前(60歳頃)とまったく異なる仕事出典:JILPT(2019)「高年齢者の雇用に関する調査」。60歳定年制企業4,218社の回答結果を集計定年前(60歳頃)とまったく同じ仕事定年前(60歳頃)と一部異なる仕事0.05.010.015.020.025.030.035.040.045.050.0(%)2023.88図表1 60歳定年企業における定年後継続雇用時の仕事の内容
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