となっています。2022年の厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」※1によると、過去1年間に60歳定年を迎えた約38万人のうち87・1%が引き続き雇用されています。一方で、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2019年に実施したアンケート調査によると、60歳定年制の企業では、定年後継続雇用している高齢者の仕事が、「定年前(60歳頃)と同じ仕事であるが、責任の重さが軽くなる」という回答が46・1%でもっとも多くなっています(図表1)。また、いる高齢者を正社員で雇用している企業は32・4%にとどまるのに対し、嘱託・契約社員で雇用している企業は73・8%に達しています。これらのデータは、日本企業において定年の持つ機能が変わってきていることをはっきりと示しています。もっとも定年にともない行われるのが、従業員の退職から従業員の仕事や処遇の見直しに変わりはしたものの、定年が企業などにおける人事の調整や刷新につながるという点は、雇用確保措置の義務化を挟んでも変わっていないと見るべきかもしれません。日本の労働法学界における主流の見解も、この調整・刷新機能に定年制が正当化される根拠を見出し※ 厚生労働省『賃金構造基本統計調査』より筆者作成 ※1 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29133.html60歳定年制の企業のうち、定年後継続雇用して2010年2015年2020年20019018017016015014013012011010020~24歳25~29歳30~34歳35~39歳40~44歳45~49歳50~54歳55~59歳9図表2 年齢階層別賃金の状況 (10人以上企業に勤務する一般労働者、所定内給与、20~24歳の平均額=100)
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