エルダー2023年8月号
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14■■るかを検討します。また、原資を捻出する場合、特に若手・中堅社員からネガティブに受け取られないような配慮が必要となります。60歳超の処遇改善の原資を捻出するために、単純に若手・中堅層の年収の伸びが抑制される構造となると、定年延長をネガティブに受け取られがちです。このような懸念を払拭するため、貢献度の高い若手・中堅社員には従前以上の賃金を受け取ることが可能な仕組みづくりなどがあわせて必要となります。て、おもに「①基本給カーブの変更」、「②諸手当の削減・廃止」、「③賞与の基礎部分の減額」、「④退職給付の改定」の四つの手段が検討できます。原資捻出方法を見きわめるにあたっては、減額対象者に説明できる公正な減額根拠があるかどうかが肝要です。本来は支給する意義の薄れた給与・諸手当を見出し、その金額を減額・廃止するというのが理想です。例えば、50代以降の基本給カーブを逓■減■させるケースがあります。これは、従来の日本企業では年功的に昇給するケースが多く、50代の特に非管理職層の給与水準が貢献度に比べて高いことを是正したいというニーズがともなったものです。また、60歳以降の賃金水準アップが比較的近い将来でもあるため、50代以降であれば処遇改善を自分事としてとらえやすく、給与カーブを逓減させることに対する理解を得やすい事情もあります。会社としての持出原資や捻出原資の目途が立てば「定年延長」とし、かぎられた原資しか準備できないようであれば、貢献度の特に高い層に厚く報いていくようメリハリを高める形で「再雇用」の賃金制度を改善する方向が望ましいでしょう。原資捻出があまり見込めない状況で、職務の観点から定年延長を実施されたい場合には、段階的に定年年齢を引き延ばし、原資増額の影響を抑制するといった手段なども検討できます。「再雇用」を従前から採用している企業のなかには、60歳超社員の賃金水準を大きく下げ、事務系の定型業務や製造系の軽作業をになわせるケースが見られます。しかしながら、将来的にはAIなどの技術進展もあいまって、このような定型業務・軽作業を会社が用意する余地は小さくなります。何よりも、定年を迎えるまでの長い年月をかけて熟練した人材の集大成の業務として相応しいものとはいいがたいです。代においても低い賃金水準に合わせた業務を担当させるのではなく、年齢にかかわらず貢献を引き出し、そのうえでそれにふさわしい処遇を検討すべきでしょう。「定年延長」を選択するにしても「再雇用」を選択するにしても、60歳超社員が各人の専門性と職業人生に向き合い、知的創造業務をにないながら情熱をもって働き続けられるようになることを願ってやみません。本稿がそのきっかけとして参考になれば幸いです。昨今賃上げの動きが強まるなか、60歳超の年2諸手当の削減・廃止3賞与の基礎部分の6おわりに図表3 原資捻出方法(例)No.手 段基本給カーブの変更減額退職給付の改定説 明資料提供:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社・ 60歳前の基本給カーブの上昇率を逓減させる代わりに、60歳以降の基本給水準を引き上げ・ 50代の非管理職層の給与水準が貢献度と比べて高い(年功色が強い)場合に、その是正(役割給または職務給の導入)とあわせて実施するケースが多い・ 過去からの経緯で支給されているものの、内外の環境変化により従来の支給意義が薄れている手当を削減・廃止・家族手当や住宅手当など、生活関連手当を統廃合の対象とするケースが多い・賞与(主に基礎部分)を減額・ 会社業績に応じて支給減額される可能性のある賞与ではなく、安定的に定年延長後の月給として受給できる意味で、社員側にメリットあり・ 給付水準の引下げ(例:基準退職金に加えて加算される長期勤続優遇の引下げ・廃止)・ 年金化メリットの引下げ(例:確定給付制度にて年金受給する際の利率の引下げ)・終身年金の縮小・廃止 (例:支給開始年齢の60歳から65歳へのくり下げ)60歳以降の処遇引上げの原資捻出方法とし2023.814

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