■■■■SHIROの製品で使われている代表的な素材が「酒かす」と「がごめ昆布」。酒かすは日本酒の製造工程でできる副産物で、がごめ昆布の根は固くて食用にならない。どちらも栄養価が高いにもかかわらず、かつては廃棄されていた素材である。これらを活用してものづくりに活かしてきた。2021年には、福■永■敬■弘■氏が代表取締役社長に就任し新体制がスタート。そして2023年4月、創業の地である北海道砂川市に新工場をベースとした複合施設「みんなの工場」が完成した。カフェやショップ、キッズスペースなどを設け、食やカルチャー、環境保全が学べる施設として地域の人たちが集う場所になっている。同社の社員数は約400人(2023年6月時点)。経営拠点である東京オフィスに60〜70人、製造拠点である砂川工場に約50人、販売の現場である全国の店舗に約300人が在籍する。男女比率はほぼ同じで、社員構成の大半を占めるリテール職(販売担当員)に若年者が多く、平均年齢は34歳。シニア層は60〜64歳が3人、65〜69歳が1人、70歳以上が6人であり、雇用形態は全員が契約社員かアルバイトである。職種は清掃、事務、製造部門となっている。最高年齢者は砂川工場の製造部門に所属する83歳。製造業務を長くになってきた人材だが、現在は清掃業務に職種変更して会社に貢献している。同社は「世の中をしあわせにする」ことを企業理念に掲げ、徹底してその実践を目ざしている。「自分たちが本当に使いたいと思えるものだけをつくり、たくさんの人に届けたい」というシンプルな想いを原動力にして事業を拡大してきた。また会社の価値観として社員が共有する「人・地球・社会に対して誠実に正しいことを行うものづくり」は、組織の方針、運営においても明確な基準となって、施策導入の判断および実行にブレなく作用している。そんな同社は、2022年11月1日に定年退職制度を撤廃した。「定年退職制度の撤廃の根幹には、当社の〝人〟に対する想いがあります。当社では、年齢、国籍、居住地にとらわれることなく自由に自分自身の未来をデザインでき、将来を描けるような環境を整えていくべく多様性を尊重していきたいと考えています。それを表現する言葉として社内で使われているのが『誰も排除しない』というものです。〝何かを基準に何かを諦めてしまうこと〟がないように環境を整えています。例えば、年齢は一つの基準になり得るものですので、年齢に制限されることなく、自分の人生が描けるように、そして、100年続く会社を目ざすにあたりシロの社員が長く活躍できる環境を整えるために、まずは定年退職制度の撤廃が検討されました」ルに長けた社員の必要性を感じ、シニア採用の実施を開始したという。「定年退職制度の撤廃については、顧問の社会保険労務士にも相談し、いろいろなことを確認しました。会社の制度上、とても大きな変更となります。一度定年退職制度を撤廃した後に、また定年退職制度を設けるとなると、就業規則の不利益変更となる可能性もあるということを聞き、これは勇気がいる決断でした。それでも人材の活用方針・理念をふまえ、リスクをともなう側面はありながらも、年齢にとらわれることなく、自分の将来と人生を考えてもらうための決断をしました。会社としても大きな一歩といえると思います」ける際にはハードルが高くなるという点で慎重になったが、それでも再雇用制度ではなく、定年退職制度の撤廃までやり切る固い意志を持って取り組んだ同社。関連グループと経営との間また、部署によって経験豊富で専門性やスキ一度撤廃してしまうと定年退職制度を再度設年齢にとらわれない未来の実現に向け定年退職制度を撤廃2023.816
元のページ ../index.html#18