また、社員の新しい才能の開花や挑戦を支援するための仕組みとして、「ジョブチャレンジ制度」がある。これは、年齢、職種を限定せず社員全員が規定内で自由に応募することができる、自己申告制の社内異動制度。年2回定期的に実施しており、「これまで経験してきたことを次は違う領域で発揮したい」、「経験してきたからこそ、このグループでこんな視点が活かせるのではないか」といった個人の希望と主体性が尊重され、社員の主体的なキャリア開発につながる仕組みとなっている。また、「この職種で、この店舗で働きたい」など、細かい部分まで社員は申請することができる。毎回10人前後の応募があり、実際に異動が実現するのは3〜4人だという。「社員のキャリア形成を支援すると同時に、グループに新しい視点が加わることで、組織が活性化されるというメリットもあります。異動が決まった際には面談で会社側が期待する役割をしっかり伝えています。一定の評価があっての異動になるので、本人の自信にもつながっています」一度希望が通らなくても何度もチャレンジが可能。定年退職制度が撤廃されたことから、60歳超の社員がジョブチャレンジ制度を活用し、社内で第二のキャリア人生を開拓することも可能になったといえるだろう。評価制度については、同社の「年齢にとらわれない」という考え方もあり、シニアを対象とした評価基準などは設けていない。年齢に関係なく、全員が一社員として同じ基準で評価される。経営が評価者となって実施する絶対評価制により(販売担当のリテール職は除く)、一人ひとりの成長や業績を個別に判断して評価を決め、賞与と処遇に反映してきた。2023年度からは、半年単位で指標を決めて達成度を把握する評価制度がスタートし、モチベーションやスキルアップに導くためのよりよい制度構築を図っている。リテール職については「スペシャリスト制度※1」、「キャリア制度※2」により活躍をうながしている。「世の中をしあわせにする」というシロの理念に基づいて人事施策を検討した先に、「社員が自身の人生を考えるとき、年齢の制限があってはならず、できるかぎり自由であるべき」との考えが生まれ、定年退職制度の撤廃に至った同社。ニア採用の募集を広める働きかけをどうするかが今後の課題になる。橘さんは最後に次のように述べた。「当社の事業や取組みのすべては、『世の中をしあわせにする』という企業の理念に集約されていて、製品のみならず社内制度にもあらわれています。ブランドの想いを知って賛同してもらえる人が増えるとよいと思っています」シニア採用で入社する社員を想定し、長期にわたって働くうえで負担にならない制度を検討していく方針だ。て働く人が多い。これは同社の企業理念と合致し、親和性が高いと想像できる。今後シニア採用から多くの人材が定年にとらわれることなく活躍の場を得て、同社の事業と相乗効果を生むことを期待したい。引き続きブランドの考え方を尊重しつつ、シ今後年齢を重ねてシニアになっていく社員、シニア層は概して、社会貢献をやりがいとし社員のキャリア形成を支援する「ジョブチャレンジ制度」人事制度や製品にも企業理念があらわれる※1 スペシャリスト制度……接客やタッチアップにおいて高いスキル・実力のあるスタッフを認定する制度※2 キャリア制度……接客や店舗運営、スタッフ間のコミュニケーションに対して年に一度実施する人事考課制度2023.818
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