ないようだ。再雇用者にかぎっての制度ではあるが、副業についても好評で、報酬が目的というよりは自分の新しい趣味や可能性、新しいスキルを磨くという理由から、今後も申請者が増えていくと植村さんは見込んでいる。給与は副業をしなくても生活できる程度に設定しているので、副業についてはセカンドライフを充実させる側面が大きいが、新しい再雇用制度の導入にあたり、なかには不安を抱く対象者もいたという。そこで、再雇用制度改正にともなって始めたのが、定年を迎える1年前に必ず行う個人ごとの説明会だ。「あなたは1年後このような待遇になります」、「副業はこういう条件でOKになります」ということを伝え、理解してもらう場である。「説明会で一番最初にお伝えすることは『いままで長らく勤めてくださってありがとうございました』という感謝の気持ちです。そのうえで、働き方や業務内容がどう変わるのか、それから収入面、最後に副業の話という順番でご説明します。説明会を始めてからは、自分の行き先が見えない状態で定年を迎えてしまうということがなくなり、しっかりと説明をしてくれてありがたいという声もあります」と植村さんは手応えを感じている。2023年7月1日時点での60歳〜70歳までの人数は図表3の通り。今後の課題について植村さんは、「今回の制度は定年を迎えた社員の方々のセカンドライフを自分自身で切り拓いていく、キャリア自律をうながすための制度でもあるのですが、一方で定年後再雇用になって突然『キャリア自律を』といわれても戸惑う社員もいます。そうした社員に対するサポートや教育がなかなかできていないのが課題です。今後はその点をしっかりと取り組んでいきたいと思います」と語る。副業ができるようになっても、何をしてよいかわからない社員もいるため、いままではそういった社員に個別にアドバイスをしてはいたものの、これを体系立てて情報発信したり、サポートや教育の場を創出することが植村さんたちのこれからの課題となる。今後も会社としてどのような人事制度・教育制度にしていくかについてはさらに制度改革を進めていくという。「まだまだ完成形ではないのでブラッシュアップが必要だと考えています。実際に定年に直面している人たちにとっていかに使いやすいものになっているかということと、時代も変わってきますので、現在は70歳までの就業確保が努力義務ですが、これが75歳、80歳になったときにもしっかり対応できるような柔軟な制度にしていきたいと考えています。『ここまでできたから完成』ではなく、時代と社員と会社の考え方にマッチしたものへと常に進化させ続けていきたいです」と、制度の未来を見すえている。今回の制度刷新が完成形ではないブラッシュアップし進化させ続ける資料提供:株式会社ジャパネットホールディングス2023.822図表3 60歳〜70歳までの従業員の就業区分60〜64歳65〜70歳年 齢55人18人雇用形態嘱託社員契約社員パート社員嘱託社員契約社員パート社員9人17人29人1人8人9人嘱託=再雇用
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