食文化史研究家●永山久夫23エルダー「桃■■栗■■三年、柿■■八年」とは、昔からよく知られたことわざです。モモの生育はとても早く、芽が出てから三年もすれば実をつけるという意味で、中国には、「頭が白くなっても、桃の種は蒔■け」ということわざがあるそうです。モモは、古くから不老長寿をもたらす、仙人の食べる「霊果」と考えられていました。平安時代の『医■心■■方■■』という医学書に、「桃を食するとお通じがよくなり、顔色もさえて、精気が盛んになる」とあり、次のような中国の仙人のエピソードを紹介しています。「ある男が、霊気ただよう高い山に入っていきました。モモの木があり、見たこともないような、大きなモモがたくさん実をつけていたので食べたところ、急に息が楽になり、体も軽やかになって、楽しくて仕方がありません。谷川に映った顔を見ると、血色もよくなりニコニコしています。男は、山がすっかり気に入り、その後もずっと山中で暮らし、300歳になったときに、村に戻ってきましたが、体中つやつやとしていて、気力はまるで壮年のときのようでした」これは、モモに含まれている不思議な長寿作用のことを伝えたエピソードです。日本の『古事記』にも、モモの実の霊力を伝える不思議な神話が記されています。イザナギノミコトが死霊に追われたとき、モモの実を投げつけて救われたと、モモに潜むふしぎなパワーが述べられています。モモの栄養の特徴といえば、水分を除くと、果糖、ブドウ糖などの糖分が多く、脳の働きをよくするうえで役に立ちます。ほのかな酸味は、クエン酸やリンゴ酸などで、血行をうながし、疲れを除くなどの作用があります。注目されるのは、水溶性植物繊維のペクチンを豊富に含むことで、お通じをよくして血圧の安定に役立つ効果が期待されています。また、モモの種子の核は「桃■■仁■■」と呼ばれていますが、血行を促進したり、お通じをよくするなどの効果があるといわれています。中国では、薬といっしょに煎じたり、スープに入れて用いたりしているそうです。モモを食べて若返った男ペクチンでお通じをよくするFOOD357モモは仙人の食べもの日本史にみる長寿食
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