エルダー2023年8月号
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第5回高齢社員の意欲を高める研修をしたい!集中連載内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。プロフィール内田教授に聞く定年後に再雇用で働く高齢社員が「再雇用になって給料が下がったからやる気が出ない」、「これからは面倒なことをやらずにのんびり仕事をしたい」といったら、一緒に働く同僚はどう思うでしょうか。職場のチームワークが失われるでしょう。もちろん多くの高齢社員はそのようなことを考えず仕事をしっかりやってくれますが、どこかで意欲の低下が見られるのではないでしょうか。一律に賃金を下げず、高齢社員の働きぶりを評価して処遇に反映させるのはもちろんのこと、会社からのさまざまな働きかけや取組みが高齢社員の意欲を高めます。高齢社員の意欲低下の背景には、これから自分が会社で何をすればよいのか、そもそも会社は自分に何を期待しているのかがわからないということもあるようです。会社が高齢社員に技能伝承や後進育成を期待している場合、その役割を直接、具体的に伝えているでしょうか。漠然とではなく、だれを対象に、どんな技能や技術を、どのような方法で、何を用いて、どのレベルまで伝承し育成するか、かつ、それをいつまでに達成するかなど会社の考えを伝えれば、高齢社員にとっては目ざすものがはっきりします。ところで自分の強みが何かを見失っている高齢者もいれば、強みを自覚していてもそのまま通用すると思い込んでいる高齢者もいます。いつまでも職場で頼りにされる戦力であり続けるため高齢者になる前から研修を行います。例えば、自身のキャリアをふり返って強みは何か、それが効果的に活かせる分野はどこかを理解し、環境変化のなかでも実力を発揮できるようにIT機器操作や若手とのコミュニケーション技法を学びます。また、管理職にも研修機会を与えて高齢社員の強みを引き出す力をつけてもらいます。このように、若手や中堅にはない強みを持つシニアが、意欲的に仕事に向きあえる環境づくりのためにも研修は欠かせません。29マンガで学ぶ高齢者雇用エルダー高齢社員の意欲低下には会社が期待する役割・目標を明確に自身の強みの理解と環境変化への技法を学べる研修が効果的解 説解 説解 説 定年後、再雇用で働く高齢社員は、賃金一律低下などを背景に働く意欲が低下してしまうことがあります。加えて、会社が自分に何を期待しているのかがわからなかったり、会社も具体的な目標を高齢社員に伝えていなかったりすると、高齢社員も何をモチベーションに働けばよいかを見失ってしまいます。70歳就業時代を迎えたいま、高齢社員に戦力として働き続けてもらうためには、賃金制度の見直しや、期待や役割を明確に伝えることとともに、研修などを通じて自身の強みを効果的に活かせる分野を理解し、環境変化のなかでも実力を発揮できるスキルを身につけてもらうことが重要です。高齢者雇用のポイント教えてエルダ先生! こんなときどうする?Season2

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