エルダー2023年8月号
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 ■■■■■■   ■■■■■■  ■■■■■■■■戦国のニヒリスト戦国時代末期に、〝社会からの退去続き〟で人生を送った男がいる。真木嶋昭光だ。かれ自身がそうしたかったわけではなく、かれの主人がそうしたからで、かれは主人にしたがったまでである。主人は足■利■最後の将軍義■昭■だった。織田信長によって将軍に擁■立■され、信長によって廃された悲劇の主人公(つまり社会からの退去続きの主人公)だった。昭光の生年月日は不明だ。姓もよくわからない。かれが生活の拠点にしていた伏見は、いわば〝水好■一族や松■永■久■秀■らによって殺の溢れる地域〟で京都の南方にあたり、南下してきた河川が一斉に終結する。鴨川・桂川などだ。このころはこの辺りに大きな沼があった。この沼に河川が注ぎこむ。そしてまた出て行く。行先は淀川だ。沼のなかに島ができた。真■木■(槙)島はその一つだ。昭光の家は、そこから姓を取った。「生年月日や、姓名なんかどうでもいい、この世における符■牒■にすぎない。すべては幻だ」と考えていたのかもしれない。第十三代足■利■義■輝■が重臣の三■された。応仁以来の〝下■克■上■(下2023.830[第129回]

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