エルダー2023年8月号
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本田さんは現在、お孫さんの家族と暮らしている。本田さんの仕事を知ったひ孫から「おばあちゃん、すごか」と声をかけられた。「すごか」という熊本の方言が本田さんにぴったりだ。マクドナルドでは、多様な人材が個々の能力を発揮できる職場環境の構築を進めている。とりわけシニアへのまなざしが温かく、全国で1万人を超えるシニアクルーが元気に働いている。シニアクルーの目標の先には本田さんの姿が見えているに違いない。第二のキャリアスタート働き続けられる喜びいます。思えば介護の仕事もいまの接客の仕事もだれかに気持ちよく過ごしてもらうためのお手伝いという点で共通しており、そのために自分ができることを一生懸命やっていきたいと思います。清掃の仕事は67歳で定年を迎えましたが、まだまだ体は丈夫だし、何よりも動くことが好きだから一日も早く働きたいと次の仕事を探していました。そんなとき娘が、マクドナルドが高齢でもクルーを募集していることを新聞で知り私に教えてくれました。すぐに電話して面接してもらい、採用が決まりました。それから気がつけば23年が経ちました。契約は1年更新で、1年が経つたびに「また1年働ける」とうれしくなります。働かせてもらえるという感謝の気持ちだけは持ち続けたいと思っています。仕事の内容は店内全体や機器の清掃が中心です。熊本下通店はアーケードのなかにありますから、出社するとすぐ制服に着替え、アーケードの店先の清掃から始めます。着替えると気持ちがシャンとし、仕事モードのスイッチが入ります。店までは始発のバスに乗り、バス停から少し歩きますが、これも日々の元気につながっています。店先の清掃が終わると階段やトイレ、クルーの更衣室などの掃除です。朝7時半から客さまのなかには「いつもきれいにしてくれてありがとう」、「いつまでもお元気でいてください」などと親しく声をかけてくださる方もいて、そういうときは仕事を続けてきてよかったと思います。気持ちよく働いた後に制服を脱ぐと、今度は充実感で一杯になります。「今日もよくがんばったね」と自分に声をかけ、商店街を散策してから帰路につきます。不思議なもので、仕事の形態は違いますが介護の経験がいまに役立っています。それは患者さんやお客さまに向きあう心だと私は思っています。介護の仕事に就いたのは、「だれかの役に立ちたい」という思いからでした。自分が働くことでだれかに喜んでもらいたいという気持ちはいまも変わらず、店内をていねいに掃除するとき、お客さまの笑顔を思いながら作業しています。清掃の経験ももちろん役に立っており、人生において無駄な経験など何一つないと私は思います。畑いじりぐらいでしょうか。いまはトマトとピーマンが育っています。一緒に食事をしたりしましたが、みんな、一足先に旅立ってしまいました。寂しいですが、店に行けば孫やひ孫の世代の人たちとおしゃべりできるので本当に楽しいです。熊本下通店では15歳から90歳まで、60人のクルーが在籍しているそうですが、みんなよい人ばかりで、私は嫌な思いをしたことが一度もありません。「会社というものは、こうでなければならない」と私は思います。みんなが仲間だという意識があれば高齢者が働きやすくなり、働く人も増えるのではないでしょうか。こも悪いところはありません」とお褒めの言葉をいただきました。これからも健康に気をつけてここで働き続け、明日も笑顔でお客さまを迎えたいと思います。休日は水曜日と日曜日です。趣味といえば自由な時間には、かつては4人の仲良しと先日、近所の病院で血液検査をしたら、「ど高齢者に聞く10時半までの3時間、週5日の勤務です。お37エルダー

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