役職定年制に基づく賃金減額について役職定年後の地位と処遇についてから外して専任職階に発令するようにするものであるが、右変更は、これに伴う賃金の減額を除けば、その対象となる行員に格別の不利益を与えるものとは認められない。したがって、本件就業規則等変更は、職階及び役職制度の変更に限ってみれば、その合理性を認めることが相当である」と判断しています。したがって、就業規則において役職定年制を導入する場合には、合理性が認められると考えられます。ただし、その場合でも、「賃金の減額を除けば」という留保が付されていることから、賃金の減額幅が大きい場合には、合理性が否定される可能性があります。3近年の事例において、57歳が部長職にとっての役職定年と定められ、従業員が役職定年を迎えると、部長の役職から離脱し、以降、専任部長とされ、役職手当が支給されなくなるという制度を設けていたところ、当該役職定年が適用された労働者が、不利益変更であり無効であるとして争ったという事案があります(東京地裁令和2年8月28日判決)。労働者は、役職の有無にかかわらず、業務内容などの事情に変化がないことなどを理由として、減額前の賃金を支給するように請求していました。裁判所は、会社が、「役職定年制度規程に基づく役職定年制度が設けられており(中略)部長職の役職は57歳が役職定年とされ、部長職にあった従業員は、役職定年による役職離脱日(役職定年に到達した直後の期末)を迎えると、部長の役職から離脱し、以降、専任部長とされるものとされている(役職離脱に伴い、役職手当の支給はなくなる。同規程8条第2文ただし書。)」ことを前提に、当該役職定年規程が、就業規則としての周知が行われていたことや、当該役職定年規程の内容や目的が「役職人事の円滑化と若手社員の登用による組織の活性化と競争力の強化を図る」としていたことに照らし、相応の合理性を認めることができるとして、役職定年制の有効性を肯定し、賃金の減額も認めました。4役職定年後の賃金減額が有効と認められやすいとしても、定年退職後に契約社員として雇用を継続する場合には、同一労働同一賃金の観点からの再検討も必要となります。紹介した各裁判例においては、役職定年制の適用により、役職から退いた労働者は、専任職階や専任部長という地位になるとされています。これらの「専任」という言葉は、主として、一般職に急激に降格することを回避するために、技術や能力を有する労働者が、新人教育や指導に従事するといった経験を活かすことができる職種として位置づけることが想定され、またそれは理想的でもあります。と合致しない形で、責任者としての地位の後任が育っておらず、従前の業務を継続してしまうようなことがあると、問題があります。定年を迎えるまでの間は、期間の定めのない労働者同士の同一労働同一賃金の制度がないことから、役職定年が適用される結果、賃金の減額は肯定されやすいと考えられますが、それでも、業務内容や責任の程度が同一のまま、役職定年規程を杓子定規に適用して賃金が減額されることになると、人事権としての裁量を逸脱し、違法と判断される可能性は残るでしょう。働同一賃金の制度が適用され、正社員と比較されることになります。定年後もなお、業務の内容が同一のまま維持されるような事態に陥れば、このような場合にも、賃金の減額が違法と判断される可能性が残ります。合には、役職定年制によって組織の新陳代謝を図るべき状況にあるとはいえないうえ、賃金支払総額の抑制が必要な場面に至っていないともいえそうです。そのため、役職定年制を形式通りに適用することなく、適用を延長しつつ対応するといった方法も考えておく必要があるように思われます。一方で、専任職階や専門職といった名称また、定年後に契約社員となると、同一労前記のように後任が育っていないような場45エルダー知っておきたい労働法AA&&Q
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